無翼の天使
1 邪魔なダークマターたちはいなくなった。今ここにいる敵はあの布を体に巻いた人物のみ。しかも動けないと見た、これほどのチャンスはまたとないだろう。 アーク・トゥルスとベガはダッシュで動けなくなったグラビティ・デストロイヤーへと向かっていく。 …
1 実際、何が起こっているのかなんてわからなかった。いや、恐らくわからない方が良いのだろう。自分の周りには沢山の人が倒れている。誰だかわからないが、普通じゃないのは確かだ。そして、その倒れている人々の中で一人だけ、不敵に笑って立っている人物…
1 アーク・トゥルスとベガの二人は噴水広場に落ちていた瓦礫に身を潜めていた。布らしきものを体に巻いている人物がいるところより200mほど離れているが、星の戦士の目は常人より凄いため、問題は無かった。 2人はここに着いたばかりなので状況の把握はしき…
1 出遅れてしまった。ダークマターは1人、天界を飛んでいた。 第6島とかいうところでプレアデス星団と戦っていたら、ゼロ様が来てプレアデス星団を一気に蹴散らしてくれた。それから、我々はプレアデス星団を噴水のある広場に運んでいたのだが、自分は誰も…
1 『復活に必要な呪文が違います(メモリーパッケージ)』・・・・・・。 『記憶の選択者』である『メモリーズ・セレクター』の能力。 記憶の選択者・・・・・・セーブデータを選んでロードをするようなことでもできるのだろうか? 「"うち"は生まれてきてから…
1 人格が変わった?否、人が変わったのだろうか?デネブが知っている限りでは、フェイト・プロフェットの一人称は"私"、"ぼくちん"、"あちき"、"本官"、そして今の"うち"・・・・・・。 おふざけでもここまで一人称を変えやしないだろう。しかも一人称ごとに口…
1 「んん〜・・・見失っちゃったかぁ・・・・・・」 噴水広場の噴水に座っているフェイトはベテル・ギウスとポルックスの追跡から戻ってきたダークマターたちの様子を見てそう悟った。 「まぁ、捜せば見つかるよね、先にこっちを終わらせちゃおうかな?」 フ…
1 心臓が止まりそうになった。いや、一瞬だけ確実に止まっていた。ベテル・ギウスの背筋に悪寒が走る。ベタベタした汗が一気に流れ出た。体中が小刻みに震え始める。鼓動の音が周りにも聞こえそうなほど大きく思えた。よくわからないがベテルの体は間違いな…
1 それから二十分の時間が経ち、アーク・トゥルスが市民をつれて神殿に戻ってきた。どうやら何事も無かったようだ。 「帰ったぞ、市民を入れても構わないか?」 「ええ、大広間以外にも広いところはあるし、全然問題ないわ。」 ベガは20mある扉の両脇にある階…
1 目的地である神殿が見えてきた。今この状況で唯一明かりが点いている。ベガはそこを目がけて飛んでいく。 「着きました、こっちです!」 ベガの言葉を聞くと、後ろをついてきている市民は一斉に加速し出す。わっ、と市民の歓喜の声が聞こえてきた。安全で、…
1 目的地に近づいていくいつれて、爆発音や雷鳴が聞こえ始めた。ベガ曰く、第6島でプレアデス星団がダークマター族と戦っているらしい。アークの顔は曇っていく。仲間が戦っているところの近くを通るのだ、気にせずにはいられない。 「・・・・・・今は、我…
行間 アーク・トゥルスは暗い夜の闇をまっすぐ飛んでいた。ベガ率いる市民の団体を捜すためだ。そしてもう一つ、謎の時間のずれ・・・。この現象の実態を探るために、アークはひたすら空を飛び回っていた。 「(58・・・59・・・20分経過・・・)」 アークは…
1 突如、自分たちがいるところの真上・・・上空に、無理矢理開くようにして星型の穴が開いた。その周りの空間はねじ曲がっている。 その穴の中から、白い球体が出てきた。その球体に、ダークマターたちは集まっていった。 白い球体の中心で、紅い目がゆっく…
1 よくよく考えてみれば、ベガにはもう少し残ってもらった方がよかったかもしれない・・・。 「やっべぇな・・・」 フォー・マルハウトは戦場のど真ん中で嘆息した。ベガが残ってくれていればもっとこちらが有利になっていたかもしれない。 だが戦況は五分五…
1 ポルックスはベテル・ギウスとソルの会話の内容を理解できていなかったが、その内容に違和感を覚えた。 先程、ベテルは会話の中でこう言った。 『やったことないので出来るかどうかの確証はありませんね。』 そしてソルはこう言った。 『よくわかんねぇん…
1 ベテル・ギウス、ポルックスの二人は、下界に行くことを決意した。 「・・・それで、どうやって天界に行けばよろしいのですか?」 下界に行くならば下界に行く手段を知らなければならない。普通、『実戦部隊』もしくは『情報処理』に昇格しなければ下界への…
1 『下界』とは、我々人間が住んでいる『宇宙』のことだ。標高の高い山の上に住んでいる人々は山のふもとのことを『下界』と言うらしいが、天界からすれば『宇宙全体』が下界である。 「下界って・・・何故ですか!?」 ポルックスが一番気になっているのは『…
1 「・・・そうか、すまんな、お前たちにすべて任せてしまって・・・」 高さ20m弱の扉の奥からソルの申し訳なさそうな声が聞こえてきた。 「め、滅相もないです・・・!僕たちは自分の意思で戦ったんですから・・・!!」 ベテル・ギウスはソルの驚きの言葉に困…
1 十分後・・・ アークとベテルはバラッバラのチームワーク(?)で残りのダークマター七体を撃破した。十分で倒したとはいえ、ダークマター達は強かった。アークとベテルは傷だらけのボロボロになっている。 「・・・そろそろ戻る?」 掠れた声でベテルがアーク…
1 いつもは、このくらいの時間になると民家や神殿などの明かりが点き、暗いと思うようなことはなかった。商店街の明かり、噴水広場のイルミネーション・・・どれも美しく、遠くから見れば輝く宝石のように見えた。 しかし今は違っていた。どこも明かりなんて…
1 前にも書いたが、物事には必ず『原因』というものが存在する。右足を前に出し、次に左足を前に出せば歩ける。両足を交互に出すから歩ける。 『足を前に出す』という原因が無ければ『歩く』という結果は出ない。 「・・・つまり、『ダークマター族が攻めて…
1 とにかく突破口を見つけなければ・・・ベテルは相手にダメージを与える方法を考える。 「(剣技では間違いなくあいつが上、たとえ触れたとしても電撃がくる・・・避雷針はもう使えない・・・くっ)」 傷も小さくはない・・・出血も多い、ベテルが倒れるのも…
行間 アークはソルの言われたとおりに神殿の外でベガとベテルの帰りを待っていた。しかし、一向に帰ってくる気配がない。 「・・・(あれから20分待ったが、人っ子一人来ないとは・・・何かあったのか?)」 アークは退屈そうに神殿の壁に腰かけていたが、20分…
1 宇宙最強・・・ その称号は誰かが勝手につけたものだった、自称ではない。だが、彼にはそれぐらいの実力があった。とても強かった。誰もがその人柄と強さに惹かれていた。アルタイルも、その内の一人だ。 『プレアデス星団団長実戦部隊「戦士(ウォリアー)…
1 未だに信じられなかった、信じようとしなかった・・・・・・信じたくなかった。 痛い・・・ものすごく痛い。これが『痛み』・・・体が重い・・・これが皆が感じてきた苦しみ・・・? そもそも何で『痛み』というものも知らない俺が副隊長の『痛み』なんか語…
1 「よく聞けアーク」 いつの間にいたのか、扉の向こうからソルがよく通る声で言う。 「もうすぐベガとベテルが市民を連れてここに来るはずだ。外に出て彼女等を待っていてほしい。」 「・・・はい」 戦士はたくさん傷つくかもしれない、だがせめて市民だけ…
1 どうやらまだ皆無事のようだ。 「よかった・・・」 ベガはプレアデス星団の面々を見てホッとした。そんなベガのところに気配を消したフォーが近づいてくる。 「ベテルはどうした・・・?」 「わぁ、ビックリした!!いつの間にいたのよ!?」 「・・・そう言わ…
1 アークは天界を飛び回っていた。かつての師『ドゥーベ』等逃げた北斗七星を捜すためだ。ソルは「下界に逃げた」と言っていたので下界に行くため、アークは下界への道を探して天界中を飛び回っていた。 「どこだ、下界への通路は・・・どこにある!?」 アー…
1 頭の左側に生えている角が光り出した。しかし角自体にそんな発光能力はない。 これはカストルの能力が発動している証なのだ。 そんなことを知る由もないダークマターは迷わずカストルに攻撃を仕掛ける。バチッ、と雷が弾ける。 「ぬん・・・!」 6体分の雷…
1 逃げる。ただひたすら逃げる。逃げて逃げて、徐々に神殿との距離を縮める。たかが400mだ、走ればすぐにたどり着く。ベテルとポルックスは少しでもダークマターとの距離を伸ばすため、一歩一歩に力を込めて走った。 「・・・・・・っ」 まともに呼吸する暇…