「無翼の天使」 ♯原因ト結果

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前にも書いたが、物事には必ず『原因』というものが存在する。右足を前に出し、次に左足を前に出せば歩ける。両足を交互に出すから歩ける。
『足を前に出す』という原因が無ければ『歩く』という結果は出ない。
「・・・つまり、『ダークマター族が攻めてきたのはあたし達星の戦士が原因』だってこと?」
ベガはフォーの目を見て言う。フォーが言っている"ダークマター族がここに攻めてきた深い理由"とは、一体何なのだろうか?
「詳しくはわからない・・・だが、奴らは俺らのことを『狂っている』と言っていた・・・天界で暮らしている俺たちは狂っている、と・・・」
フォーは戸惑っている感じだった。このまま戦うのは正しいことなのだろうか?という顔をしている。
「話を・・・聞いた方がいいんじゃない・・・?」
ベガは下で戦っているダークマターたちとプレアデス星団を見ながら言った。急襲だったとはいえ、彼らにも戦う理由というものがあるはずだ・・・
「今のやつらの状態からして、それは難しいな・・・」
恐らく、ダークマター族はそれほど頭に来ている。そもそも、最初から話し合いで解決できる問題ではないのだ。
ふと、フォーは思い出す。
「・・・そうだベガ、ソル様の許可は取れたのか!?」
「うん、あたしはこれから市民を神殿に誘導しようと思うんだけど、誰か手伝ってくれると助かるかも・・・」
「悪いが俺は無理だ。団長たちが帰ってくる間、ここを仕切るように任されたからな。」
フォーは目を薄くして答える。下では団員たちとダークマター族が互角に戦っている。はやく加勢に行きたいがこの問題も無視できない。フォーは団員の顔を頭の中で並べ始めた。だが、すぐに下で爆発が起こり、二人の意識はそちらに向いた。
「くっ・・・悪い、俺はもう我慢できない・・・!!」
フォーはそう言うとベガの答えを待たず戦場に降下して行った。確かに自分も我慢できない・・・ベガは仲間を誰よりも大切にする。この光景を見ているだけで胸が痛くなってくる。市民と、仲間・・・どちらかを先に助けても、助けられなかった方は間違いなく傷つく。だが、先に助けるべき対象は決まっている。
「(戦いに慣れていない市民を優先しよう・・・市民の方が数が多い、それだけ傷つく可能性もあるし・・・)」
不安も多々あるが、今は考えるより先に行動するしかない。ベガは市民が一時的に避難している場所へ向かった。



プレアデス星団のベガです。これから皆さんには神殿に移動してもらいます。まず・・・」
ベガは大勢の市民の前で一人、これからについての説明を行った。その場で考えた言葉なのでうまくまとまっている自信は無い。だが、市民は冷静にベガの話を聞いていて、どうやら理解していただけたようだ。
「・・・というわけで、複数グループに分かれて移動しますので、ご家族の方々はお互い離れないようにして移動してください。」
複数といっても、2、3、グループぐらいにしか分けられない。一人で誘導するには、それくらいが限界である。しかし問題が生じる。まだダークマター族そこら辺を見回っているはずだから、もし遭遇してしまったらベガ一人ではどうしようもない。やはりもう一人くらい助けが必要だ。
ベガがお腹を押さえながら心の中で「誰かぁぁぁぁぁぁ・・・」と祈るように思っていると、思いが通じたのか
「よう、手伝ってやろうか?」
背後から声がした。
ベガが後ろを向くと、そこには戦場にいるはずの『アンタレス』がいた。



「フォーに言われてな、しょうがなく来た。」
「・・・そう」
『しょうがなく』という言葉にベガは微妙にイラッときた。
神殿までの道のりは微妙だ。およそ20〜30分といったところで、近いのか遠いのかわからない。往復40〜60分、二グループに分かれたため、つまりそれを二往復するから、全員避難し終えるまでおよそ80〜120分くらいかかると思われる。大勢での移動の為、さらに時間がかかる可能性もある。
「現在時刻午後六時五十分・・・もうすぐ七時になるな。おいベガ、はやく行くぞ。そろそろ寒くなり始めるからな」
アンタレスは後に移動するグループに指示しているベガに言った。するとベガは小声で
「あとから来たくせに上から目線とか、なんかムカつく・・・」
「何か言ったか?」
「・・・べ、別に」
ベガはニコッと咄嗟に作り笑いで返した。微妙に顔が困っている。
「(でも、確かにアンタレスの言う通りね・・・少し肌寒くなってきた)」
神殿まで行けば食料もあるし暖も取れる。寮棟を使えば休むこともできる。
寒さというものは不安を一層募らせる。はやく市民の不安を少しでも取り除かなければ・・・



・・・続く!!
今回は終始ベガ視点ですw
アンタレスェ・・・女子の手伝いしようとしてるけど素直に「手伝おうか?」って言えない男子かよ!!
って感じですねww

休みって必要だよね^ ^