「無翼の天使」 ♯『痛ミ』

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未だに信じられなかった、信じようとしなかった・・・・・・信じたくなかった。
痛い・・・ものすごく痛い。これが『痛み』・・・体が重い・・・これが皆が感じてきた苦しみ・・・?
そもそも何で『痛み』というものも知らない俺が副隊長の『痛み』なんか語ってたんだろう?知りもしないくせに、まるで『痛み』を知っているかのように・・・カストルは心の中で自問した。
「痛いか、カストル君?」
フェイトは優しい声で問いかけてきた。
「全・・・然、痛くなんか・・・・・・ねぇよ」
カストルは苦しそうに言う、本当はものすごく痛かった。声もかすれている。
立つことができない、頭がズキズキする。視界もハッキリしない。体中が震えていて、腹がジンジンする・・・
カストルが初めて感じた体の『痛み』は、尋常ではなかった。
「人の『痛み』を、理解していただけたかな?初めて『痛い』と思った感想は?」
フェイトは相変わらず軽い口調で話しかけてきた。
「・・・知る・・・・・・かよ、んなこと・・・」
カストルは今にも消えそうな声で答えた。
アルタイルはカストルに近づこうとしたが、体が言うことを聞かない。
カストル、しっかりしろ・・・!」
「副団長アルタイル、この子の自業自得だよ、この子は君の『痛み』を知ったかぶりしてダークマターに同じことをしようとしたんだ。」
フェイトは正当なことを言う。確かにその通りだが・・・
「何も・・・そこまでする必要はないだろ!?」
アルタイルは叫んだ。
「んぇ?だってここまで威力強めないとこの子に攻撃届かないジャン。ま、ちょっとやりすぎちゃったかな・・・?」
フェイトの返答は本当に軽かった。ふざけているように聞こえる。
「でもカストル君、まだわからないみたいだよ・・・?」
くくく・・・とフェイトはカストルを見て不気味に微笑んだ。
「・・・・・・!!??」
カストルはそんなフェイトを見て恐怖を覚えた。体の震えが増す。
またあの『痛み』を味わうのか?
「・・・嫌だ・・・・・・来るなよ・・・もう嫌だ!」
カストルは怯えていた。『痛み』を知ったことで、『痛み』に対する恐怖が芽生えたのだ。
「・・・あらら、『トラウマ』になっちゃった?」
『痛み』というのは子供の頃から何回か味わうことで徐々に耐性が付いていく。足を擦りむいたり、指を切ってしまったり、小さなことで痛み、泣く。しかし大人になっていくにつれて、転んでも泣かなくなる。次第には転んだら「痛い」と思うより「恥ずかしい」と思うようになる。事故などは大人になっても痛い、これは何回起こっても変わらない。
しかしカストルは、小さい頃から足を擦りむいたり、指を切ったりという経験が無かったため、『痛み』というものを知らなかった。



カストルには『痛み』に対する耐性が付いていなかったのだ。



そして今、フェイトによって受けた攻撃は、初めての『痛み』にしてはとても『痛かった』。
生まれたばかりの赤ん坊が初めて『痛み』を感じるのは大抵、大人から見て「そんなことで?」って思うようなことだろう。いきなりみぞおちに入るようなことはまずされるはずがない。
しかしカストルが生まれて初めて感じた『痛み』は鳩尾に入るようなことをされたも同然だった。
よって、カストルの心には『痛み』に対するトラウマが刻まれてしまった。



「・・・来るなよ、嫌だ」
カストルは体をフェイトの反対方向へ逃げるように引きずって下がっていく。
そんなカストルを見てフェイトはフゥッとため息をついた。そしてこう言った。



「人の痛みも知らねェで自分の力に自惚れてたからそうなんだよクソガキが・・・!!」



「っ!!?」
アルタイルはその言葉を聞いただけで身震いした。言葉よりも、その言葉を言っていた時にフェイトの背後に見えたとてつもなく暗く深い、邪悪なオーラに身震いたのだ。
そんなフェイトを見て、近くにいた黒い星型の一つ目も身震いしていた。名は『ダークゼロ』という。
「フェイト様・・・!?」
ダークゼロは持っていた袋を地面に落とした。落とした衝撃で袋の口が緩む。
「!!?」
アルタイルは袋の中身を見た。その中には
「デネ・・・ブ・・・!!?」
よく見知った顔と翼が見えた。袋の中にはプレアデス星団団長の『デネブ』がいたのだ。
驚いてるアルタイルを見てフェイトはこう言った。
「・・・あぁ、団長デネブは大丈夫だよ。少し眠ってもらってるだけさ、心配しなくていい。直、目は覚める。」
そんなこと言われても袋の中に見知った顔が見えれば心配してしまう。
「っ!!」
アルタイルは"数秒"遅れた後、ハッとする。アルタイルはフェイトに向かって恐る恐る質問した。
「お前らの目的って・・・・・・俺らなのか!?」
今まで狙われてきたのはプレアデス星団ばかりだった。初めてダークマターを見かけたとき、ダークマターは市民や民家より、そこにいたプレアデス星団を狙っていなかったか?ベテルも、フォーも、カストルも・・・おそらく自分も・・・?
行くところには必ず彼らが来た。プレアデス星団のみんなと市民のパニックを止めていたときは、あれだけ市民がいたにも関わらず、彼らは襲ってこなかった。では彼らの狙いは何か?
アルタイルは質問する前の数秒間、ある人物からテレパシーを傍受していた。リアルタイムのテレパシーではなく、少し前に録音されたものだった。それを聞いたからアルタイルはフェイトに質問をした。
テレパシーの内容はこうだった。



『もしもし?あ、やっと通じた・・・?ベガだけど、落ち着いてよく聞いて?私やフォー達プレアデス星団と、ダークマター達が今ぶつかっているの。私は途中参戦したからよくわかんないんだけど、「市民とヒヤデス星団のみんながいなくなった後」に彼らが襲ってきたらしくて、とにかく今大変なの、なるべく早く帰ってきて・・・!!』




・・・続く!!
今回、悪役はどっちだよw
って感じw
さりげなくフェイトは名言(?)を残していきました・・・



「人の痛みも知らねェで自分の力に自惚れてたからそうなんだよクソガキが・・・!!」


どう解釈すればいいのかというと、
『人の痛みも知らない格闘技を習っている不良が、自分の力を過信し、その力で人を痛めつけようとするから、しっぺ返しを喰らうんだよクソガキが・・・!!』
ってことです。わかるかな・・・?
あれ、つまり今回の悪役って・・・え、アレ?



黒幕が良いこと言っちゃってるゥゥゥゥ!?