「無翼の天使」 ♯接触

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「よく聞けアーク」
いつの間にいたのか、扉の向こうからソルがよく通る声で言う。
「もうすぐベガとベテルが市民を連れてここに来るはずだ。外に出て彼女等を待っていてほしい。」
「・・・はい」
戦士はたくさん傷つくかもしれない、だがせめて市民だけは無傷で安全な場所に避難させたい。星の戦士は基本自分の命よりも他人の命を優先する。そういう風に遺伝子が作られてしまっているのだ。命を守ることに限り、『自己犠牲』という言葉は彼らにとって当たり前なのだ。
ダークマター族の目的は『天界の土地を手に入れること』だと僕たちは推測しました。恐らく、昼間の『彼』もこの戦いに関連していることでしょう・・・。」
エルミスがついでに説明する。『昼間の彼』というのは体中に布らしきものを巻いた『フェイト・プロフェット』のことなのだが、そのことを彼らは知らない。
「俺は外でベガ達を待てばいいんですね・・・?」
「ああ、後のことは追々説明する。よろしく頼む」
言われると、アークは「了解」と短く言って走って行った。
「・・・あれでまだ訓練生とは、勿体無いですね」
エルミスが残念そうに言う。あれだけしっかりしているのに何故まだ訓練生なのか、といった感じだ。
「・・・さぁな、合否を決めるのは『レグルス』達王家なんだ。彼らなりの考えってモンがあんだろ?」
マーズが答える。その直後、アースが思い出したように疑問を持った。
「そういえば、王家は何してるんだろね?・・・まさか彼らも閉じ込められたっていうんじゃ・・・?ゴホッ」
その疑問はすぐに解決した。
「・・・ああ、王家は下界に視察に出てる。恐らく、王家はこの出来事を知らない。なんせ通信もまともにできないからな。」
なるほど、とアースは納得した。しかし、もう一つ疑問が生じた。



「・・・ダークマター族の目的は大まかに言うと『土地』なんだよね、何で『下界の土地』にしなかったんだろう?・・・ゴホッ」





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辺りは随分暗くなってきたが、カストルの角が光っているおかげで相手が見えないということは無かった。
カストルの反則級の能力にダークマターは戦意を喪失していたのだが、
「・・・お前らが副団長にしたことはまだ許してないぞ?」
カストルダークマター達を睨みつけた。
カストル、もういい・・・止せ」
アルタイルはカストルを止めようとする。本人が許せばそれでいいはず。
・・・なのだが、
「・・・甘いよ副団長、コイツらはあなたの痛みを知らない。」
「・・・・・・!」
アルタイルは少し変な気分になった。確かに自分はこいつらに痛めつけられた。
だが、"ただそれだけのこと"だ。仕返しするようなことではない、彼らは既に戦意を喪失している。ここで彼らを攻撃しては、こいつらと同じになってしまう。それは絶対に駄目だ。
「止めろカストル、俺はそんなこと頼んじゃいない!」
しかし、カストルは止まらない。
「俺が許せないだけだよ。悪いけど、勝手にやらせてもらう」
「バカか・・・!?何言ってやがる!?お前が傷ついたわけでもないのに、何故そこまで」
「うるさいなぁ、ちょっと黙ってろよ」
「・・・!?」
カストルの口調が段々酷くなってきた。まるで人が変わったように・・・
「何が・・・?」
アルタイルが疑問を隠せずにいると、



「はいはーい、ちょっとそこの君、止まろうか〜」



と、やけに軽い声が聞こえてきた。
「んぁ?」
カストルが声の聞こえたほうを向く。
アルタイルも追いかけるように声の聞こえたほうを向いた。
そこには、『体中に布らしきものを巻いた人物』がいた。
「誰だよ、お前・・・?」
カストルが訊く。すると謎の人物はこう答えた。



「ん、『この世を創り変える者』だけど?」



軽々と、そして淡々と、恐ろしいことを言った。
「ちっ!?」
よくわからないがこいつはやばい・・・!カストルは直感でそう思った。迷わず攻撃を仕掛ける。カストルはあらゆるエネルギーを吸収することができる、返り討ちに合うことは無い。
と、カストルは思っていた。
ドゴォッ、と鈍い音がカストルの体中に響いた。
「っが!!?」
フェイトは少しも動いていなかった。
カストルは初めて味わう激痛にその場でのた打ち回った。カストルがダメージを負ったのだ。
「(なん・・・で・・・!?攻撃のエネルギーだって『運動エネルギー』として吸収できるはずなのに!?)」
カストルはわけがわからないといった感じだった。フェイトはカストルを見たまま後ろに下がった。
「簡単さ・・・」



「君が吸収しきれないほどのエネルギーを一瞬にも満たない時間で君にぶつけただけだよ。」




・・・続く!!
カストルは調子に乗りましたww
そしてすぐにその代償を喰らいましたww


やはりフェイトも強かった^ ^;
『一瞬にも満たない時間』て何分の何秒よ?