「無翼の天使」 ♯交ワル二人

                       行間
アークはソルの言われたとおりに神殿の外でベガとベテルの帰りを待っていた。しかし、一向に帰ってくる気配がない。
「・・・(あれから20分待ったが、人っ子一人来ないとは・・・何かあったのか?)」
アークは退屈そうに神殿の壁に腰かけていたが、20分も座ってきつくなったので立ち上がった。少し背伸びをする。
「にしても、ホントに遅いな・・・」
アークはふと空を見る。空には少し曇っていたが星空が広がっていた。下界ではどこを探してもこんな夜空は拝めないだろう。
時刻は午後六時三十五分・・・もうすぐ夜になる。午後二時の時点ではまだカストル達と笑っていたのに、たったの五時間でアークはたくさんの物を失った。
「(この戦いが終わっても、きっと完全にもとの天界に戻ることはできないだろう・・・)」
そう思った直後、北北東の空で何かが激しく光った。すると、空から剣らしきものがそこに落ちた。
「!?」
多分、そんなに離れてはいないだろう。アークは少し気がかりになる。
「何か、邪悪な気配がするな・・・ダークマター族か!?」
アークはそう言うと真っ先に北北東へ走っていった。あそこで誰かが戦っている・・・アークは直感でそう思ったのだ。
その『誰か』の正体はアークが思いもしない人物だった。



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例え、どんなに傷ついても守る。大切な友を・・・故郷を・・・
ベテルの目に恐怖は見えなかった。そしてまっすぐ黒い剣士を見据えていた。黒い剣士もまた、目つきが変わったベテルを見ていた。
「・・・子供と思って侮っていたが、どうやら間違いだったようだな。子供とて立派な『星の戦士』・・・本気で手合せ願おう・・・!!」
剣士の目に闘志が宿った。ドッ、と剣士が跳ぶ。ベテル目がけて一直線に跳んでいく。ベテルは手に持っている剣『無敵(アパラージタ)』を構える。
「それは僕をバカにしてるの?それとも褒めてくれてるの?」
お互いの距離はあまり離れていなかったが、ベテルは剣士の動きを見極め、最も安全で隙を見せないように避けた。
そして剣を振る。剣士はそれを予想していたのか体を捻り、剣をベテルに振る。
ガッキィィィン!!と激しく剣同士がぶつかる音が響く。摩擦で発生した火の粉が飛ぶ。



両者はわずかに笑っていた。



ベテルが剣を振り、それを剣士が避け、剣を振る。それをベテルは剣でガードする。ベテルは剣士の剣をずらし、反撃する。ベテルの剣が剣士に当たる直前、剣士は体中から雷を発生させた。
「ぐっ!!」
ベテルは5mほど吹っ飛んだ。ベテルは吹っ飛んでる最中、地面に剣を突き刺し、ブレーキをかける。地面が削られ、勢いが止まる。
「っはぁ、凄いな、生き物ってホントに5mくらい吹っ飛ぶんだね・・・!」
「・・・何なら10m飛ばしてくれようか?」
ベテルは剣士に突っ込んでいく。剣士は剣に帯電させ、ベテルを待ち構えた。ベテルは少し屈み、両者がぶつかる。バジィッ、と激しく雷が轟いた。
「!?」
剣士は感触に違和感を覚えた。煙が退くと、ベテルと剣士はつばぜり合いをしていた。
「・・・いかにして我が電撃を避けた?」
「簡単だよ、『避雷針』に雷を誘導しただけさ。」
「避雷針、だと・・・?」
見ると、すぐそばの地面に細長い金属棒が刺さっていた。
「僕の能力は想像したものを異世界に創造する。そしてこの"召喚石(サモンストーン)"でこの世界創造したものをに召喚するのさ」



異世界想造(アナザークリエイト)・・・想像すれば異世界に物を創造できる能力。
動作はいらない、ただ想像して召喚するだけだ。先程『無敵(アパラージタ)』を召喚した時は召喚石(サモンストーン)を空へ投げたが、実はまったく必要のない動作だ。
ベテルは一瞬で避雷針を召喚し、そばの地面に刺したのだ。



「・・・フッ、中々面白い奴だな、楽しませてくれる」
だが・・・と剣士は避雷針を吹っ飛ばし、剣を構えた。
「同じ手を喰らうほど、私はバカではないことは、重々承知しているな・・・?」
ベテルは少し息を飲んだが、
「当然・・・!!」



極限の中の命のやり取り、それでもベテルが気にしているのは、自分の命より、友の命だ。





・・・続く!!
バトル展開久しぶりww
アルタイルandカストル視点は終わったのでしばらくベテルandポルックスと、アーク視点に集中すると思いますw
ポルックス空気ですけどねwww