「無翼の天使」 ♯時間感覚ノ麻痺

                       行間
アーク・トゥルスは暗い夜の闇をまっすぐ飛んでいた。ベガ率いる市民の団体を捜すためだ。そしてもう一つ、謎の時間のずれ・・・。この現象の実態を探るために、アークはひたすら空を飛び回っていた。
「(58・・・59・・・20分経過・・・)」
アークはちらりと近くにあった時計を見る。その時計は午後7時02分を指していた。アークが神殿から出たのは午後6時52分・・・20分間数えたにも関わらず、実際にはたった10分しか経っていないということだ。天界の時計はすべて統一しているから、ずれているということはない。
「やはり、時間が不自然にずれている・・・違うな、"時間の感覚がおかしくなってる"・・・というべきか?」
アークは止まって考察を始める。あまり言い慣れない言葉だが、この表現が一番しっくりくる。むしろそれ以外の表現が見当たらない。
「俺はしっかりと20分間を計ったはずだ、なのに実際は10分しか経っていない・・・こんなことはありえない。自然現象でもこんなことは起こらないはずだ。つまり・・・誰かが能力みたいなものを発動させた、というのが妥当だろうな。」
アークは再び前進ながら思ったことを述べた。聞かせる相手はいないのだが・・・。
「(まぁ、別に困るほどのことではないし・・・ん?)」
アークの前方20mほどのところに、黒い影が五つ浮かんでいた。見つけて、アークは直感でその正体を察する。
「(・・・・・・ダークマター族!!)」




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ベガとアンタレスが率いる市民団体は、神殿まで残り10分というところまで来ていた。
「・・・・・・!」
突如ベガとアンタレスがが何者かの気配を感じ取り、市民たちの動きを止める。フォーほど気配に敏感ではないが、この程度なら星の戦士は皆感知できる。
「ベガ・・・」
「ええ・・・」
前方に50mほど離れたところに黒い影を見つけた。2人はお互い目を合わせ、頷く。
「誰・・・?」
ベガは前方の黒い影に正体を訊いた。アンタレスは市民を地面に下ろさせている。黒い影はうごめき、近づいてきた。
「やれやれ、気づくのが早いな・・・」
5つの目が光った。そこにいたのは、5体のダークマター。ベガは突然の攻撃を警戒し、少し身構えた。
「あなたたちの狙いは何?市民の命?」
「いや、一般人に興味は無い。あるのは貴様らプレアデス星団・・・」
ダークマターがベガの質問に答える。どうやら隠す気は無さそうだ。ベガは目を細め、ダークマターを睨む。
「私たちを?何故・・・?」
「答える義務はない・・・捕獲を」
「ああ、お前らに答える義務はない。お前らは今すぐ消えるべきだ・・・!!」
ダークマターの背後から声が聞こえた。ベガはその声には聞き覚えがあった。
「・・・な」
5体のダークマターが反応する前に、実体の無い爪がその体を一気に引き裂いた。まさに一撃、まさに必殺。5体の一つ目は黒い雲に分解され、そのまま空気に溶けていった。雲が払われ、実体の無い爪の持ち主が姿を見せる。
「アーク・・・」
ベガはダークマターを斬った者の名前を言った。



「なんだアーク、お前強ェのな・・・」
安全を確認したアンタレスと市民はベガとアークのもとに集っていた。
「・・・市民はこれで全員か?」
アークが市民の団体をざっと見渡しながらベガに疑問を投げかける。全市民にしては数が少ないと思ったからだ。
「いえ、二グループに分けて移動してるから、残りの市民は待機しているわ」
「・・・市民を危険な場所に残してきたのか?どこだ?」
アークはベガの答えに更に疑問を持つ。
「『第8島・多目的広場』に残りの市民が・・・『第6島』でプレアデス星団のみんながダークマター達と戦ってる・・・」
アンタレスが答える。第8島と第6島とはかなり近所だ。戦いの火種が飛んでくる可能性は決して低くはない。
「・・・市民が戦いに巻き込まれたらどうするんだ、市民は戦えないんだぞ!?いつ爆発するかもわからない爆弾のそばに仲間を置いていくようなもんだろ!!」
アークが2人に向かって怒鳴った。ベガとアンタレスはアークの声を聞いた瞬間、ビクッとした。まさか怒られるとは夢にも思わなかったからだ。2人は俯いた。アークはそんな二人を見て自分の言っていた言葉に気づいた。説教する立場でもないし、二人にも事情があったはずだ。アークは黙ってしまった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙・・・暫くすると3人は気まずくなってきた。
そんな空気を変えようと、アークが切り出した。
「・・・俺が残りの市民を連れてくる。二人は先に神殿に向かっててくれ」
「えっ、でもダークマターが」
ベガがアークの言葉を聞いて心配した。ダークマターはまだいる、一人では危険だ。だが、アークは自慢げに
「大丈夫だ、俺はベテルとダークマターを10体倒したんだぜ?まぁ、弱かったけど・・・」
「10・・・!?」
その数字にアンタレスは驚愕した。しかも、ベテルと共に、というところにベガが反応した。
「あなたと・・・ベテルが?ダークマターを、10体も!?」
「ああ。あいつ、一人で強そうな1体を倒したんだ。おかげでバカみたいにボロボロで、包帯だらけになってるけど、命に別状はないよ。」
「そう・・・なんだ」
ベガは涙目になる。やはり、ベテルと離れて心配していたようだ。



「・・・じゃあ、先に行っててくれ。すぐに追いつく」
アークはそういうと第8島に向けて飛んで行った。ベガは遠ざかっていくアークの後ろ姿を笑顔で見送りながら、呟いた。
「・・・ベテルも、アークも、なんだかたくましくなったなぁ・・・子供の成長を見守る親って、こんな気持ちなのかなぁ・・・?」
ベガの言葉を聞いて、アンタレスは困った顔してベガに言った。
「・・・・・・お前、親になる予定でもあんの?」
「っ!!?な、なななななななっ!?」
「・・・行くぞ、アークが来る前に神殿にいなきゃな」
赤面しているベガをよそに、アンタレス興味なさそうに市民をまとめてさっさと進み始めた。




・・・続く!!
こうしてアーク視点とベガ視点は交差しました(え
アークの能力値が半端なくなってる件ww



只今ボカロキャラ集合絵を制作中・・・
デフォルメしてるけど、そうでもしなきゃ描き切れそうにないのでorz


シエナ「どうせ大した作品になりはしないわよ」
Wander「どうしてこう水を差してくるんだ、シエナたん!?俺のこと嫌いか!?」
シエナ「好きにはなれないわ・・・」
Wander「ストレートに言うなよ(T_T)」