「無翼の天使」 ♯悪シキ者ハ・・・

                       1
天界の中で一番大きく、最も重要な浮島『ティ・エルド』に建っている神殿の中に、ベガ、ベテル、アーク、星の勇者十二隊はいた。
「・・・カストルポルックスは?」
ベテルがアークに尋ねた。
「わからない、いつの間にかはぐれてしまった・・・すまん・・・」
アークはよほど悔しいのか歯を思いっ切り噛んでいた。ベガは慰めるように
「アークは悪くないわ、悪いのはあのダークマター族たちよ・・・」
とアークの肩に手を置く。しかしアークは俯いてしまった。
「悪いのはダークマター族・・・ね。果たしてそうかな?」
ソルが突然否定するように口を切る。
「何か・・・知ってるんですか?」
ベガは声がよく聞こえるあたりまで顔を扉に近づけて訊いた。
「・・・先程、この会議室によくわからん奴が来てな、『天界の土地を哀れな生物に分けてください』と言ったんだ。」
「すぐに断りましたけどね。ソルはせっかちだから・・・」
いつの間にかエルミスが扉の近くに来ていたようで、一言余計なことを言う。
「・・・その『よくわからん奴』というのは一体何者ですか?」
ベテルが質問した。『よくわからん奴』だと真剣さに欠ける。
「わかってたらすぐに追い返してたさ。だがソイツからはどこか"俺たちと同じような気配"を感じたんだ。」
・・・・・・・・・・・・。
沈黙。一層わけがわからなくなってきたベテルは当初の目的を思い出す。
「そ、そうだ。ソル様、市民を神殿に一時避難させてもよろしいでしょうか?」
「・・・とりあえず、市民を一か所に避難させましたが、いかがいたしましょう?」
ベガは思い出したようにソルに現状を伝える。
「・・・デネブは何してる?」
ソルは何かを考えながらデネブのことを訊く。
「団長はまだ助かっていない市民がいる可能性を考え、見回りに向かいました」
ベガが正確に情報を伝える。実はアルタイルとシャウラカストルポルックスを捜しに行っているのだが、念のため伏せておく。
「・・・『北斗七星』を呼べ。彼らなら動けない俺らの代わりにお前らの助けになってくれるだろう。」
『北斗七星』とは星の戦士の中でも特に強く"最初の星の戦士の血"を受け継いだ者たちのことで、その力はデネブとほぼ対等である。
「・・・"師匠"たちを呼ぶんですね?」
『北斗七星』の中にアークの師匠である『ドゥーベ』という者がいる。アークに籠手の使い方を教えているのは彼だ。
「ああ、アーク、頼まれてくれるか?」
ソルは『北斗七星』に知り合いがいるアークに頼む。
「・・・はい、了解しました!」
アークはすぐに神殿を出た。


                       2
デネブはいったん噴水広場から離れていた。体が思うように動かないのだ。いつもなら追いつかれるはずのない攻撃を追いつかれた。
デネブは『井の中の蛙』というほど世間知らずではないし、自身を過剰評価していたわけでもない。今までに攻撃を見極められたことはあるが、初見で攻撃を見極められたのはこれが初めてだった。
「(何が・・・どうなって・・・)」
直後、
「・・・発見」
「っ!?」
見つかった。
バッジィィィィッ、と雷が弾けるような音が響いた。デネブには直撃しておらず、周りの瓦礫に当たり、その破片が雨のようにデネブを襲う。
「ぐっ・・・!?」
ドザザザザザ、とデネブの体中を破片が切り刻んだ。瓦礫の雨が止み、デネブの体はボロボロになっていた。
「ハァ・・・ハァ・・・ハハハ、なんてこったい」
デネブは笑っていた。久しぶりの緊張感、危機感、傷、これほど追いつめられたのは何百年ぶりだろうか・・・?
「どうしようかなぁ、コレ・・・」
のんきなことを言ってる場合ではないのだが、どんなに追い詰められても自分を見失わないというのがデネブのやり方だった。
しかし、
デネブの体は地面に倒れてしまった。
「(体に・・・力が・・・入らないや・・・)」
そんなデネブに容赦なくダークマターは近寄る。
「そろそろ、動きを封じようか・・・」
ダークマターが初めて生き物らしい声を発した。
すると、コッ、と足音がなった。
デネブが顔を上げると、そこには・・・

「フフフ、団長が一番最初に捕まるとは情けないじゃないか・・・?」

体に布らしきものを巻いた人物がいた。



・・・続く!!
展開はやい?いやいや、まだ終わらんよw


ニコニコ超会議開催まであと二日!!