「希望の翼」 ♯兄ノ講義

運動場に入ると、もうすでに生徒が整列していた。
アルタイルとベガは別々に入ることにした。一緒に遅れたとなれば変な誤解を招く可能性があるからだ。
まだ始まっていないらしく、生徒はざわめいている。
アルタイルは周りに気づかれないよう迅速に列に入っていく。クラスの男子はアルタイルを発見して余計ざわめいた。
『なんだあいつ、何今更来てんだよ』
『ああやって目立ちたいだけなんじゃねェの?』
丸聞こえだったのだが、アルタイルは気にせず無表情で座り込む。
『(所詮バカの戯言だしな・・・・・・)』
アルタイルは辺りを見渡す。この運動場もかなりの広さがあり、学年全員が入っても余裕がある程度なのだが、他の育成所の一学年全部が入ればさすがに窮屈だ。
空は清々しいほど青く、疑似太陽が照っているのだが、気温は低く風も強い。
ベガが座ると、それを待っていたかのように『戦士(ウォリアー)育成所』の生徒会長であり、アルタイルの双子の兄であるデネブが正面の壇上に上がった。
「えー、『第五島十六地区魔法使い(ウィザード)育成訓練所』の皆さんお早うございます。『第五島十八地区戦士(ウォリアー)育成訓練所』の現生徒会長のデネブです。これから二時間ほど僕たちと合同で授業を講じたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いしますね。あと、皆さんの協力が無いと二時間で終わらないかも知れませんからご協力もお願いしますね。」
マイクを通した声が運動場に響く。生徒会長とかの話というのは大半が下らなく、どうでもいいことなので双方の生徒は特に関心を持たないままデネブの話は終わった。
・・・・・・・・・かに思えた。
「ちょっと話をさせてくださいね、これも授業の一環ですので・・・・・・というか敬語とか柄じゃないからここから普通に話すよ?」
アルタイルが目を細める。普通、生徒会長の話というのはあいさつと少し話をするだけの立場のはず、なのに授業の一環にするつもりだ。
『(何話す気だ、デネブのやつ・・・・・・?)』
「・・・僕は『絆』と『命』と『心』を大事にしているんだ。この三つは輪になっていてね、『絆』があるから『心』が温まる。『心』があるから『命』を支えられる。『命』があるから『絆』が生まれる。ほら、繋がってるでしょ?僕はこの輪のことを『人生』って呼んでるよ。どれか一つが欠ければ他の二つが駄目になる。君たちはちゃんと三つを大事にしているかな?『絆』をバカにしてないかい?『心』に穴が開いていないかい?『命』を粗末にしていないかい?誰かを仲間外れにしたり、悪口言ったり、暴力を振るったりしていないかい?」
『・・・・・・・・・』
そこにいる誰もが沈黙。デネブの言葉に耳を傾けていた。最初は聞く気もなかった生徒もデネブの話を聞いていた。彼には人を引き付ける何かがある。口にする言葉の一つ一つに説得力があって、決して嘘はつかない。昨日の図書館の時も、アルタイルはデネブの言葉に心打たれた。
「僕はね、頑張らないくせに他人の実力に嫉妬する奴は大嫌いだよ。ある人のその実力は才能なのかもしれない、けどそれが努力の賜物だったら?君たちがしようともしなかった努力のおかげで身に付けた実力だったら?そうだとしたらかなりの勘違いだよね?君たちがしなかったことをその人をしただけで君たちはその人のことを避けるのかい?」
『・・・・・・』
単なるたとえ話だろう。アルタイルはそう思いながらデネブの話を聞いていた。



・・・続く!!
かなり短めw
すいませんねm(_ _)m