「無翼の天使」 ♯戦士ノ憤怒

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細く暗い路地を抜けてたどり着いた噴水広場。
しかし、もうそこに本来の美しさや活気は無かった。何も知らない人ならば、『場所を間違えた』と頭はまず判断するだろう。
それほど噴水広場は破壊されていたのだ。家々は形を失い、噴水はすべての機能を失い、使い物になりそうになかった。
「ウソだろ・・・?」
フォー・マルハウトは噴水広場の変わり果てた姿に愕然とした。子供のころから見知っていた場所が、毎日通い続け思い出の染み付いた場所が、謎の襲撃によって見えなくなっていた。そこにあったはずのカフェ、レストラン、雑貨店、何もかもが。
カフェがあった場所には先ほどまで誰かが使っていたであろう椅子や割れたコップが沢山落ちていた。店の看板、天井、壁はばらばらに砕け散り、そこらじゅうに破片がばらまかれていた。

酷い・・・

襲撃者には心が無いのか・・・?なんでこんなことをする!?俺たちが何かしたっていうのか!!?
「くそったれが・・・!!」
フォーはこらえきれない怒りと悲しみに涙を流した。
それを見ていたべテルはフォーを慰めようとしたが言葉が見当たらなかった。
べテルもフォーと同じ気持ちだからだ。この広場の近くにある家でべテルは生まれた。建物がすべて崩れているということはその家も崩れてしまっているだろう。
「っ!く・・・うっ!」
怒り、悲しみ、憎しみ。いろんな感情が入り混じり、2人は何も考えられなくなった。



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「ひどい・・・ここまでやる必要はあったのかな?」
翼がほかの戦士より四つ多く生えている。計六本の翼のうち四つは小さい。
のんきに喋っているように聞こえるが、この『デネブ』という人物こそ『プレアデス星団』の団長であり、宇宙で最強の星の戦士だ。
「・・・とりあえず、そんなこと考えるよりもまず市民の安全を確保したほうが良さそうだぞ?」
プレアデス星団長であるデネブと気軽に話しているのは『シャウラ』。フォーのように尻尾が生えているが形は蠍のものだ。
通称『毒針のシャウラ』と呼ばれており、その正体はプレアデス星団のライバル組織である『ヒヤデス星団』の団長だ。
「・・・そうだね。この騒ぎで市民はパニックになってる。」
デネブはパニックを起こしている市民たちを眺めながら冷静に状況を確認していた。
「市民はうちの団員がなんとかしてくれるらしいし、僕はまだ助かってない人がいるかもしれないからちょっと広場まで行ってくる。」
デネブは団長、その気になればすべての団員を動かすことができる。
ただ、デネブ自身人に命令することを嫌っているが・・・。
「ああ、うちの団員も総出で働かせるから行って来い。」
たとえライバルであっても緊急時は協力し合う。それが星の戦士(というか人として)のマナーだろう。
「ありがとね、じゃ!」
バッ!!っと羽音が聞こえたかと思うとデネブは一瞬で見えなくなった。
「・・・やれやれ、プレアデス星団員は自主性があっていいねぇ・・・」
シャウラはデネブが飛び立って行った空を見上げながらふとつぶやいた。


(一体何が起こってるんだ?前触れなんてなにも無かった筈。)
物事には必ず原因がある。これほどのことをしたということは、それほど大きな原因があった筈だ。
デネブは空を飛びながら辺りを見渡す。そこらじゅうに黒い球体に黄色い花びらがついたような奴が浮いている。
(数は大体100・・・かな?)
ホントは見える敵すべてを倒したいところだが今は市民を捜すことを優先しなければ。
噴水広場の上空につくと、見慣れた尻尾の生えたピンク玉が見えた。
「あれは・・・」


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殺気を感じる。
どうやら自分たちが泣き崩れている間に敵が近づいてきてしまったようだ。
フォーは泣くのをやめた。
気づかれてはいないだろう、もし気づかれているのならすでに攻撃を受けているはずだからだ。
だが・・・
(気づかれるのも時間の問題。急いでここから離れなければ、ここは見通しが良すぎる。さらに相手は空の上だ。どこかにもぐりながら移動しなきゃ気づかれる。)
そこまで考えた直後、
ズンッと誰かが降りてきた。
「っ!?」
フォーは一瞬身構えたが降りてきた相手を知って警戒を解いた。
「・・・なんだ、団長か。」
降りてきたのはデネブだった。
「『なんだ』とは何さ、『なんだ』とは?」
プゥッとほっぺを膨らませながらデネブは不満を抱いた。
プレアデス星団のモットーは『万人平等』なので団長だろうと先輩だろうとため口で話すことが許される。
べテルがデネブの存在に気づき、近づいてきてデネブに質問した。
「団長、一体何が・・・?」
「わからない、ただ『正体不明の何者かが天界を襲ってきた』ということしか・・・」
デネブでも事態が把握できないとは珍しいことだ。
だが、とにかくこれでフォーとベテルの二人が敵にやられる心配はなくなった。
「団長が来たからには安全に避難できるな。」
フォーがホッと息を吹いたとき・・・
「・・・いや、そうもいかないみたい。」
デネブが何かの気配に気づいた。数秒遅れてフォーも微弱な殺気を感知した。
「まさか、気配を消していたのか!?」
フォーが驚きの声を上げた瞬間、
ガララッと瓦礫の中からたくさんの一つ目の真っ黒い球体が現れた。
「・・・目標確認。プレアデス星団、『デネブ』『フォー・マルハウト』『ベテル・ギウス』発見。捕獲を開始する。」


・・・続く!!
挿絵入れようと思ったけど挿絵の場所まで行かなかったため無理でしたorz
昨日は自分の技術力の低さににイライラしてました。
申し訳ございませんでした。

そうそう、「ニコニコ超会議」の前売り券をゲットしたぜ!!やったね(*⌒▽⌒*)