「無翼の天使」 ♯プロローグ

「明日から七日間で一つ世界を創れ。」
・・・今なんて?
ちょっと待って、話を整理させて?
「七日間ってことは一週間?」
「当たり前のことを訊くな。もう一度言う。明日から七日間で一つ世界を創れ。出来なきゃしばらく旅に出てもらう。」
そんなの嫌だ。創造神の一人、シエナは父の一言に落胆した。
七日間でなんて無茶だ。無理ゲーすぐる・・・
でも旅に出るのも嫌ぁぁ・・・
大体父上は子供の時から無茶ブリが過ぎるのだ。下界よりも広い庭の草むしりをやらされたし、
重さ二〇〇キログラムの壺を山の上まで持って行けって言うし、
「今回ばかりは絶対ムリだよぉぉう・・・グスン」
当然泣き言なんて父上は聞いてはくれない。

シエナは自室で世界の創り方を一から復習してみた。
「無理無理ぃ・・・あたしみたいな未熟女神が七日間で世界を創るなんてできっこないよう・・・」
別にできないことも無いのだが、普通、世界を創るには
生き物の作りを考えなきゃいけないし、惑星の寿命の設定、宇宙の伸縮、星の生産、四大元素も確保しなきゃいけないし、
とにかくやることがたくさんあるのだ。
それを七日間で仕上げるというのはどう頑張って徹夜してもできっこないのだ。
仮に七日間で出来たとしても世界の構成、バランス、その他もろもろがかなり脆くなる。もろもろだけに。
でも、絶対に旅に出るのなんて嫌だ。どうせ試練だとかなんとか言って父上が邪魔もしてくるだろうし・・・
「やるっきゃない・・・!まだまだ未熟女神ですけど!」
その夜、シエナは七日間のスケジュールを立てた。手帳にはびっしり文字が書いてある。
シエナは自分で書いた手帳の文字を見て苦笑した。
「うわ、寝てらんないなこりゃ・・・」



翌日、シエナは部下と協力者を集めて会議を開いた。
「七日間で世界を創るには、とにかく一分一秒も無駄にはできません。当然、手抜きも許されません。今日から七日間、皆さん必死で世界を創りましょう!!ていうか死ぬ可能性も考慮しましょう」
物騒なことと無茶なことを言う若い女神に協力者は若干引いたがそんなことも言ってられないので早速これからのスケジュールを聞いた。
「・・・という感じですが、創造する上で質問や意見はありますか?」
ホントはそんなことを訊いている暇は無いのだが念のためシエナは協力者達に訊いてみる。
「世界のバランスはちゃんとやるとして、生物にはあまり力を入れなくてもよろしいのでは?どんなに努力したってろくな生き物なんて生まれないですし・・・」
確かに、生き物がどんな生き方をするかは生き物の自由だ。原始的な生き方をするかもしれないし、近代的な生き方を始めるかもしれない。
生物が近代的な生活を始めてしまったらどんなに生物が努力しても破滅の道を進むことになるが、その過ちは破滅の道の真ん中あたりで気づくのだ。
確かにろくな生き物は生まれそうもない。
生物は勝手に進化していく。それが正しい進化か間違った進化なのかを選ぶのは生物自身だ。手を抜いても構わないだろう。
「そうね、良い意見だわ。でも・・・」
世界を創造すると何億もの惑星が生まれる。当然その分だけ文化や進化ができる。
創造する時間も短縮できる。
だが・・・
「そうなったら変な考えを持った生物が生まれてくる可能性が出てくるの。例えば、他の星への侵略行為とかね。そうなると世界のバランスが崩れるかもしれない。」
ある星の生き物がほかの星を侵略すると侵略された星の文明は滅んでしまう。それが多くの星で行われると世界の秩序が乱れるのだ。
「だったら創りましょう。下界を管理する戦士を天界で・・・」
「えっ・・・?」
言っている意味がよくわからない。
シエナは意見の意味を必死に理解しようとしたが頭の中が創造のことでいっぱいいっぱいなので途中で諦めた。
「星々を見張る戦士です。秩序を乱すものを成敗する。」
つまりは警察官のようなものか・・・
シエナはようやく理解できた。
なるほど、そういった天界の生物は他の天界の者に頼めば生み出してくれる。
自分たちが時間を割いて創る必要はない。
「星々を見張る戦士・・・か。つまりは」
これが、後に宇宙、いや天界をも救う戦士の物語の原点である。


「星の戦士ね!!」


それから七日後、シエナは見事に世界を創造した。
天界にたくさんのピンク色の玉がいた。
これが『星の戦士』である。
それから月日は何事も無く何億年も経った。


1人の星の戦士が路地を歩いていた。大きな尻尾を生やしている。
「フォーさん、見て見て。」
その前方にはもう一人、子供の戦士が無邪気に笑っている。
子供の戦士はきれいな宝石を持っていた。ただの宝石ではない。
「べテル、召喚石(サモンストーン)は人に見せる物じゃないぞ?」
「わかってまーす。だって僕だけの『星具』ですよ?うれしいんです♪」
自分だけの物は子供にとってはかなりのステータスなのだろう。他人に見せたくてしょうがないらしい。
「フォーさん、フォーさん、市場に買い物行きません?」
なにか欲しいものでもあるのだろうか?フォーと言われている戦士は兄のように子供の頭を撫で、子供について行った。
彼の名前は『フォー・マルハウト』。尻尾が特徴の戦士。
子供の名前は『べテル・ギウス』。
これから始まる物語は、すべての始まりの物語である。


・・・続く!!
うごメモでやると思った?うごメモでもやろうかなぁって思ってますw
さて、本編を見てくださっている方はすでにフォーのことをご存じのハズ。
これから見覚えのあるキャラが多数登場します。
お楽しみに!