『モモ』其の壱拾壱 「男子、寄り道する」

さて困った。
モモが道を知っているとはいえ、女子二人で『鬼ヶ鳥』に向かわなくてはならなくなってしまったのだ。
「頼りない男子ですわ・・・女子を置いて行くなんて・・・」
「まぁまぁ、愚痴を言っても何も変わらないよ」
「・・・マイペースですのね」
モモと五月は『鬼ヶ鳥』を目指して進んでいた。都会の空気・・・煙草や排気ガス、香水の匂いも混じって、なんだか色々カオスだ。カラフルな自動車が横行し、暑苦しいスーツに身を包んだ人々が行き交い、空には飛行機やヘリ、ゴミ捨て場付近にはカラスの群れ、裏路地には怪しい人影・・・これが五月の感想だ。しかしこれを改善しようとする者はいない、皆この環境に慣れてしまっているからだ。「これがこの街らしい」と言い訳し、何もしようとせずに日常に逃げる。もともと海だったかもしれないこの地に「らしさ」などもともと存在しない。この街の何を知り、何を感じてそう言えるのか・・・ただ「街に住んで良いと思ったから」と自分の感覚に麻痺し、それが当たり前だと思い始める。これが俗に言う"慣れ"というものだ。
「この街にいると・・・自分の地域がとても恋しくなりますわ」
「・・・そんなに?でもわからなくはないかな、早く済ませちゃお?」
「そうですわね、早く帰りたいですわ」
冬の寒空の下、行き交う人々の中をモモと五月は歩く。ただ目的を済ませるために・・・『鬼ヶ鳥』で買い物を済ませるために。



一方男子組、隼とタカはというと・・・
「・・・犬井君、そろそろ行かないと・・・」
「もうちょい待ちぃや」
隼が偶然見つけたゲームセンターに入ってしまい、格闘ゲームをやり始めてしまったのだ。隼は今もガチャガチャと画面越しのキャラと格闘している。今までで多分500円は使っているだろう。
「犬井君・・・」
「もっかい!もっかいだけ!!」
ランクでも上げているのだろうか、隼はひたすら強いキャラと戦いまくっている。ゲームセンターに滅多に行かないタカとしては迷惑だ。すぐに『鬼ヶ鳥』に行かなければならないというのに・・・。
しばらく隼はガチャガチャしていたが、やがて『YOU WIN!』という文字が画面に表示されると隼は「ぃよっしゃあぁぁあ!!」と歓喜の声をあげて立ち上がった。
このゲームは専用のカードに自身の記録を記憶させ、ゲームがあればどこの店のものでも自分のデータで遊べるものなのだが・・・画面に『456連勝!』と金銭的にも日数的にもありえない数字を表示されたところから・・・
「犬井君・・・最近部活サボってた理由ってまさか・・・」
「・・・・・・」
おそらく図星だろう・・・隼は部活をサボってずっとこのゲームをやっていたのだ。
「・・・猿江さんがこのこと知ったら激昂するかもよ?」
「このことは口外にしないでくださいお願いします・・・激昂した猿なんてどっかのハンティングゲームのアイツじゃん・・・多分俺死ぬよ?」
「死にたくなかったらこれからちゃんと部活に来ることだね・・・」
完全にノーマークだったタカに弱みを握られてしまい、隼は「・・・了解」と返事をする他なかった。
「ほら、行くよ」
「ちょ・・・ちょい待ち!あっちのUFOキャッチャーにフィギュアが・・・」
未だ懲りていない隼を珍しくタカが半目で睨む。
「スミマセンデシタ・・・」
隼は静かに目を逸らし、渋々ゲームセンターから出る・・・店内の騒音は嘘のように無くなり、風と少しの自動車の音しか聞こえなかった。
「多分、まだ全然遠いよね・・・?」
「多分な・・・」
2人はとにかく『鬼ヶ鳥』がある方向に歩き始めた。2人とも道は知らないが、努力と根性で何とかなる!!・・・はず。



続く・・・
女子組はのんびり進んでます。男子組は適当に進んでますw
しかし激昂した猿・・・皆さんご存知のアイツですww



本日の一枚・・・今日は遠近法を用いて描きました。ちなみにルークと廊下は別物です、ルークが廊下に立っているわけではありませんw
しかしこの描き方は難しい・・・ルークだけでなく他のキャラでも描いていかないとな・・・