『モモ』其の拾 「一行、分かれる」

洞窟を抜けると・・・ではなく、橋を渡りきると、そこは都会だった・・・当然だが。
高くもなければ低くもないビルが建ち並び、その下を自動車が横行している。忙しく人が行き交っており、その光景は人がゴミ・・・ではなく蟻のように見えてくる。しかし冬の寒さのおかげか静けさのおかげか、人々はゆっくりと目的地へ向かっている。この寒さ、静けさを少しでも多く感じていたいように見えた。もうすぐ雪は溶け、春がその顔をのぞかせる・・・そして学生は母校を離れ、新しい学校に出会う・・・そんな出会いと別れを延々と繰り返し、子供は大人へと昇華していくのだ。


しかし、そんな感動的なムードなんてお構いなしに目的地へと直進する四人組が一つ・・・
「俺、都会とか嫌いだな・・・空気が嫌だ」
横行する人々の群れに嫌な顔をしながら隼は呟いた。排気ガス、騒音、その他小さな事件・・・いわば公害の宝庫だ。
「こっちまで来るのは初めてだけどよ・・・こんなに空気が違うモンなんだな」
スーパー『鬼ヶ鳥』がある街の方が断然空気が良い、こうも排気ガスに塗れたところからは早々に離れたいものだ。
「とはいえ・・・ここを通らないと『鬼ヶ鳥』に行けないよ?」
「帰りもここを通ると思うと・・・どうも気が変になる」
「それだけは同感ですわ・・・気分が悪くなってきますもの」
「そう?ここはまだマシな方だと思うけど・・・」
モモだけはここに慣れているようで、平然としている。しかし他の三人は度重なる疲労もあり、走る元気は残っては無さそうだ。丁度その時、バスがモモ達を横切った。
「あっ、バスがあるよ。乗らない?」
モモがバスを指さすが、三人の空気は変わらない。
「めっちゃ混んでたぞ・・・つぅか自転車どうする気だよ?」
「あんな蒸し暑そうなモノに乗りたくはありませんわ・・・というか自転車どうするんですの?」
「自転車・・・・・・」
満場一致で否決・・・モモは肩を落とした。そもそも、これまでほとんど運動をせずに楽をするモモに勧められるのが少し癪に障るのだ。何故か隼は勝手に1人で進み始め、タカはそれを追いかけて行ってしまった。残ったのは女子二人組、モモと五月・・・。
「ほら、置いて行かれてしまいますわよ、行きましょう?」
「うん・・・人生って、思ったようにはいかないもんだね」
「突然自己中発言されても困るんですけれど・・・人生そんなものですわ」
そこまで楽をしたかったのか・・・と五月は思い、適当に流す。そうこうしている内にも隼とタカはドンドン進んでいってしまう・・・モモと五月は走り出すが、人ごみのせいで隼とタカが見えなくなってしまった。
「・・・・・・あら?」
「いないね・・・」
自動車の騒音、人々の喧騒が二人の孤独感を一層募らせる・・・目の前を歩いていたはずの犬井隼と雉岡タカが消えてしまった。
「しょうがないですわね・・・探しますか」
「いや、ちょっと待って・・・闇雲に探したってどうせ見つからないし、時間の浪費だよ。ここは私たちだけで『鬼ヶ鳥』を目指そうよ、多分、向こうもそう考えると思うよ?」
「・・・これまた随分な賭けですこと、でも私には携帯電話と言う文化と科学の力が・・・ってあら?」
五月は携帯を取り出そうとするが、あることに気づく。
「携帯を入れたバッグ、雉岡君の自転車の籠に入れてたの忘れてました・・・・・・」
走るのに邪魔だからと、バッグをタカ預けていたのだ、しかも携帯ごと・・・五月の顔が青ざめた。
「やっぱこのまま『鬼ヶ鳥』に行こうよ、私も今携帯持ってないし」
モモに唆され、五月はため息をつく。
「しょうがありませんわね・・・ハァ」
渋々と五月は了解し、モモと五月は『鬼ヶ鳥』に向けて歩み始めた。


一方、男子組・・・隼とタカの2人はと言うと・・・。
「・・・やばい、迷った」
「携帯は持ってないの?」
「最初は軽い散歩のつもりだったから持ってねぇや・・・」
「そう・・・僕も」
女子組の2人を置いてさっさと行ってしまったのが仇となったか、ここに来るのが初めての2人はどこに入ればどこに出るのかがまったくわからない。
「と、兎に角・・・戻ろう!」
「や・・・それが」
隼は道を振り返るが、大通りの喧騒や騒音がほとんど聞こえない・・・どうやらいつの間にかあの場所からかなり離れてしまったようだ。しかもかなり複雑な道順だったため、元の場所に戻れる自信が無かった。
道を訊こうにも人が全然通らない・・・つまりこれは、
「詰んだな」
「詰んだね」
そもそもの話、何故道も知らないのに進み始めてしまったのか・・・今の二人には過去の二人が理解できなかった。
「『鬼ヶ鳥』で待ってれば鉢合わせするんじゃない?」
「だからその道を知ってれば苦労しねえって・・・」
「・・・ひたすら『鬼ヶ鳥』の方向に歩いて行けば知ってる道に出るんじゃない?」
タカの提案・・・得策なんだろうが、それを実行するとたまに全然違う道に出て結果的に余計時間がかかるという可能性がある。しかし、今はそれしかこの状況を打破できる手は無いだろう。
「しょうがない、それで行こう」
隼が承認し、二人はこのまま『鬼ヶ鳥』を目指し始める。
男子組と女子組・・・運が良いのか悪いのか、分かれて『鬼ヶ鳥』を目指す羽目になってしまった。



続く・・・
どんだけ寄り道するんだよw
まだ『鬼ヶ鳥』に着きそうにありませんね^ ^;



どうでもいい話題ですが、プッチョの新CMが怖すぎてホラーすぎて頭に焼き付いてしまった・・・誰かヘルプ!
皆さん、見たことありますか?ニコニコニュースのコメントもほとんどが批判してましたw
兎に角、怖い・・・・・・。(- -`;)