『モモ』其の壱拾漆 「男子、辿り着く」

「着いたね〜・・・」
「着いちまったな〜・・・」
隼とタカ、男子の二人組も女子組に少し遅れて『鬼ヶ鳥』に到着した・・・・・・というか到着してしまった。
「犬井君、猿江さんの携帯は?」
「地図閉じて元の場所に戻した、抜かりはないぜ」
勝手にロックを解除して使った五月の携帯・・・使っていたとばれたらどんな仕打ちを受けるのか・・・想像もできない。2人はガクブルしながら店の中に入っていった。



「う〜ん、まだ来てないのかな〜?」
モモは買い物かごを手に持ちながら店内を見回ってみたが、隼とタカの姿は無かった。五月は別に買い物をしている。
この店はそこまで広くはないので、一回りすれば状況はだいたい把握できる。しかし男子の二人はいなかったのでまだ来ていないとモモは判断した・・・のだが、
「お〜す、モモじゃねぇか」
不意に隼が声をかけてきた。
「隼!・・・に雉岡君」
「やほ〜川本さん、ようやくここまで来れたよ・・・」
タカの両手には五月のバッグの他に何やら鉄くずのようなものが握られているが、本当に何なのかがわからないためモモはあえて見て見ぬふりをした。
「・・・にしても、よくここまで来れたわね。2人とも道知らないのかと思ってた。」
モモに悪気はないのだが、この一言は隼とタカの2人に刺さった。たとえモモに対しても「五月の携帯を使ってここまで来た」なんて口が裂けても言えない。そう、たとえ尋問されようが拷問されようが言えないのだ。言ってしまったら拷問よりも恐ろしい地獄が待ち構えているはずだ。
「い、いやぁ・・・ここまで来れたのは単なる偶然?ていうか人に道訊いたし・・・なぁ?」
「う、うん・・・親切な人だったよね・・・あはは・・・」
当然二人は誰にも道を訊いていない。2人はそっぽを向きながら笑い始めた。
「あら、来てましたのね」
男子の2人の背後にいつの間にか五月が立っていた。2人は笑顔のまま背筋が凍りつく。
「(魔王が来やがった・・・・・・!!!)」
「(誰か助けて・・・・・・!!!)」
2人の異様な様子にモモと五月は戸惑ったが、やがて五月がタカに声をかけた。
「雉岡君、バッグ返していただけませんか?」
「あ・・・ああ、うん。ごめん、持ってっちゃって・・・」
「いえ、別に気にしてませんわ」
タカは五月のバッグを持ち主の手に返す。その手はガクガクと震えていた。
「えっと・・・雉岡君?」
「い・・・いや、何でもないよ、ちょっと寒くてさ」
五月への恐怖もあるが、目の前で五月と隼が揃ってしまっているため、タカの腹の調子もおかしくなり始めていた。彼的には今すぐ逃げ出したいのだが、隼が「逃げるなよ!?」と言いたげな顔をしてこちらを睨んでいるため、逃げることもできない。
タカの顔が青くなり、脂汗が出てきた。しかし未だに笑顔であるため、かなり変な光景である。
すると、タカと隼の目の前で五月はバッグから携帯を取り出し始めた。
「「っ!!!!!」」
証拠も痕跡も残していない・・・はず、バレはしないだろう。だが油断はできない、二人は全力ダッシュの準備を女子には秘密で始める。生まれて初めて命の危険を感じ取った。大丈夫だ、大丈夫だ。と二人は必死に自己暗示も始める。
「なんだか・・・電池がやけに減っているような気がするんですけど」
直後、二人の顔から一斉に汗が流れ始めた。これは本気でヤバイ、大丈夫じゃない・・・!!
「き・・・気のせいだ気のせい!ロックかかってんだから俺らは使えないって!!」
隼が必死の弁解を始めたが、突如タカはダッシュで逃げた。
「あれ、雉岡君!?」
モモはタカの突然の奇行に仰天したが、五月は隼をキョトンと見ている。
「何で・・・私の携帯にロックがかかっていることを知っているんですの・・・?」
「あ・・・・・・」
隼は自身の一言にようやくようやく気づいた。そしてそれと同時に後悔し、ついでに走馬灯を見た。
「犬・・・・・・後でゆっくりお話ししましょうか?」
「えっと・・・ははは、後でね、後で・・・・・・」
隼の処刑確定・・・彼は本当に死を覚悟した。



続く・・・
ようやく全員が『鬼ヶ鳥』に辿り着きましたw
しかし男子組には不幸しか訪れません。バッドエンド確実ですw




早くも『USDXな物語2』の第72話が完成。



本日の偉人名言
人間は誰でもほめられることが好きなものだ。
byリンカーン


俺も褒められるの好きですw