『モモ』其の壱拾陸 「女子、辿り着く」

距離的にはそうでもないが、精神的な長旅の末、ようやくスーパー『鬼ヶ鳥』の看板が見えた。
「つ・・・着いた・・・」
モモの体から力が抜け、思わず地面に座り込みそうになる。その瞳には少しばかりの涙が浮かんだ。
「いや・・・たかがスーパーに着いただけじゃありませんの?そこまで感動するほどじゃ・・・・・・」
かなり大袈裟だが、モモはこれまでに大変な苦労を経てここまで来た・・・のかもしれない。いや実際全く苦労してない。挙句の果てにはタカの自転車が昇天する原因にもなっている。彼女は知らないが、タカの自転車はもはやただの鉄くずであり、両輪が無くなっているという致命的なダメージを負っている。
「とにかく、中に入りましょう。男子の2人も探さないと・・・」
「そうだね」
男子の2人が中で待っているのか、はたまたまだ着いていないのか・・・女子の二人は『鬼ヶ鳥』内を探索することにした。



「長い・・・一キロ長い・・・」
「犬井君、たかが200mトラック五周分の距離だよ、そこまで鈍ってるの?」
最近部活をサボってゲーセンに入り浸っている隼の体力は常人以下になっていた・・・・・・ありえないほどに。だが短距離の速さだけは未だに衰えていないらしい・・・何故。
「そもそも何でそんなゲーセンに入り浸っちゃたのさ?」
タカは片手に"かつて自転車だった物"を持ち、隼と並んで歩きながら質問する。今まで真面目に部活をしていた隼が格闘ゲームだのフィギュアだの・・・・・・何故こんなことになってしまったのか・・・。
「いやぁ、何か現実に飽きちゃったんだよな・・・なんていうか、ほら・・・わかるだろ?」
「いやまったく」
タカは手首を激しく左右させ、否定した。隼はそれを見て「それもそうか」とため息をつく。
「あることを経験すると、次第にそっちの方に興味が湧き始めるんだよ・・・お前もそれ経験したら多分俺と同じになるぜ?」
「いや、それは人によるでしょ・・・で、そのあることって?」
「言わねェよ、言ってたまるか!」
「あ、そ・・・ならいいけど」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「もうちょい食いつけよ!!」
「言いたいのか言いたくないのか、どっちだよ!?」
そう言った後、隼もタカも「フゥ」とため息をついてしまった。
「自転車は大破するわ、川本さんたちとは別々になるわ・・・まったく今日はついてないなァ・・・もしかしたら猿江さんに怒られるかもだし・・・」
「俺もだ・・・・・・そもそも朝っぱらからモモに遭遇しちまった時点で駄目だったんだ、あぁ最悪・・・」
隼はただ朝早くに目が覚めてしまっただけなのに、何を思ったか外に出てしまった・・・それが仇となったのである。
「じゃあなんで今バカ正直に『鬼ヶ鳥』に向かっているのさ?今からでも逃げることはできるはずだよ?」
「それができれば苦労しねェって・・・・・・」
隼もタカも、モモからガムを貰った身だ、貰ってしまっただけに逃げるのは卑怯であり、ズルい。そこらへんは隼も心得ている。だから逃げないし裏切らない。


見慣れた景色だ、『鬼ヶ鳥』も近い。



続く・・・
一週間ぶりねぃw
ちなみに月曜は書かないのであしからずm(_ _)m



今日から三連休!
でももう夜なのであと二日かorz
今日は近くのエンターキングに行って『WORKING!!』の(予算の都合上)第1〜4巻まで買って読んでましたw
俺好みの漫画ですわ^ ^



思いのほか『USDXな物語2』の第72話がすらすらと進むんで、明日には投稿できそうです。^ ^


本日の偉人名言
「ああ、ここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!」こういう感投詞を心の底から叫び出される時、貴方がたははじめて心を安んずる事ができるのだろう。
by夏目漱石


俺の心はきっと安じてます・・・

追伸
Twitter始めました。