『モモ』其の壱拾捌 「雉岡、救われる」

「びっくりしたぁ・・・まったく、口が軽いな犬井君は・・・」
タカは心臓を押さえながら惣菜コーナーを歩いていた。いやしかし、逃げたのは少し不自然過ぎたかもしれない・・・タカはそう考えたがやってしまったものは仕方がない、奇跡を信じてみよう。
「(にしても・・・・・・これからどうしようか・・・・?)」
自転車(だったもの)の処理・・・これを捨てようか持って帰ろうか、よくよく考えてみれば登録番号など剥がせばいいだけの話だ。つまり、捨てるか否かは彼次第、そこでタカは迷い始めた。隼と五月が揃った時の腹痛とは違った痛みを腹部に感じ、タカはお菓子コーナーに曲がった。
「雉岡君・・・」
そこに・・・五月がいた。
「っ・・・・・・・・・!!!」
タカは自然と顔を引きつらせ、首をガクガクと90°ほど横に向かせた。
「や、やぁ猿江さん・・・さっき逃げ・・・走ったのはちょっと欲しい物があってでね・・・?」
(やばい死んだ、ぜったい死んだ)
額から汗が流れ始めた・・・・・・冬なのに。
「もういいです、犬が全部吐きましたわ」
「え・・・何を・・・」
もちろん胃から逆流させたものではないということは分かっている。しかし・・・だとしたら何を・・・と、頭が考えた。いや、むしろそう考えていたい。まぁ答えは一つしかないのだが・・・。
「携帯の件です、犬から聞いた限りではあなたは何も悪くありませんよ」
「き・・・・・・」
キタァァァァァァァァァァッ!!!!もう諦めていたけど、自転車が壊れたときから人生も何もかも諦めていたけど!これは神の救いだ!!多分、僕は今日と言う日を一か月くらい忘れないだろう!タカの呆気にとられた顔から彼の心のシャウトは誰にも悟られなかった。
店内では少し古めのBGMが物寂しげに流れ続ける。しかしタカの心の中ではデスメタル並の轟音が響き渡っていた。
「き・・・・・・?」
「い、いや何でもないよ・・・」
タカの顔が緩み、腹痛も汗もピタリと止まった。



「ったく・・・結局損したの俺だけじゃねェか」
「いや、だって実際悪いの隼だけで雉岡君悪くないし・・・」
モモと隼はレジ付近で品物を見ていた。人はあまりおらず、品物も大して売れている気配が無い、しかし安さは相変わらずであり、国民の休日である日曜には人が殺到するだろう。
その時、隼は見つけた・・・あるパネルを。
そのパネルにはこう書かれていた。



『節分フェア実施中!!』




続く・・・
ここで色々なフラグがw
しかしタカは救われてヨカッタネ!何か忘れている気がするけど・・・・・・