『モモ』其の陸 「モモ、努力する」

「そもそも何で二人はそんなに仲が悪いわけ?」
何よりこの二人の仲が悪い原因がモモにはわからない・・・一体何をすればそんなに仲が悪くなれるのだろうか?
「それは・・・・・・」
「言いたくもありませんわ・・・」
言いたくないほど嫌なことだったのか言うほどのものでもなかったのか・・・どちらかは不明だが2人は話したくないようだ。
「さ、この話はこのくらいにして・・・練習の続きを始めませんこと?」
「えぇー・・・何か話逸らそうとしてな〜い?」
「どうでもいいだろ・・・つか早く買い物行きたいんじゃなかったのかよ?」
隼が促すとモモは「ちぇ〜」と少々残念そうに自転車に乗ってみるが、まだバランスすら取れない・・・自転車が倒れそうになると、あわてて隼と五月は自転車を押さえに行く。かろうじて転倒を免れたモモは汗を拭った。
「ふぅ〜、いい汗掻いた・・・」
「どこがだ!?」
「30センチも動いておりませんわ・・・」
ここまで運動が苦手だったとは・・・これは最早"運動音痴"の域に達している。なんだか今日中に乗れなさそうな気がする・・・隼と五月はお互い顔を合わせた。「正直ちょっと諦めたい・・・」2人の顔はこう言っていた。
隼はモモを見た。
「お前、50m走何秒?」
「・・・・・・」
モモは急にそっぽを向き、黙りこくった。
「確か・・・10.5くらいでしたわ」
代わりに五月が答え、隼が驚愕する。
「えぇっ!?そんな空気抵抗少なそうな体してか!?」
「お前ちょっと黙れっ!!」
モモがくわっ、と隼に牙を剥いた、しかし隼の顔に反省の色は無い。確かにモモには体の凹凸が無いがそれとこれとは別。走る場合なら如何に腕綺麗なフォームで走れるかが重要で、後は気持ちの問題である。
「足で地面を蹴って乗り続けてみたらどうですの?」
五月が思いついたように一つ意見を言う。
「そうして乗ってる間にバランス感覚が付くようになると思いますわ」
「なるほど・・・やってみよう!」
モモは言われたとおりに地面を蹴ってそこら辺を走り回った。
「おお、なんだか乗れるような気がしてきた・・・!」
少し離れたところでモモが自信ありげな顔をする、しかし隼は呆れ顔で
「あの自信はどこから来るんだか・・・」
「でもとりあえず普通に乗らせてみたら?」
いつの間にか当然のように隼の横にいたのはタカだ。
「うぉう!?おま、いつの間にいたんだ!?」
「え?猿江さんが『30センチも〜』って言った辺りからいたけど・・・?」
「それって結構前じゃありません!?」
「お〜い、普通に乗ってみるよ〜?」
モモはモモでタカのことをそっちのけで勝手に事を進め始めた。
「ちょ、オイ!?」
「まだ早い気がしますわ!」
隼と五月は慌ててモモの暴走を引き留めに駆け出す。その様子をにこにこと笑顔で見ていたタカだったが実は内心冷や冷やしていた。2人の喧嘩を見聞きすると腹痛になるというアホらしい体質を持っている彼にとって、二人が揃っている場にいることは自殺行為のようなもので、今すぐにでもここから逃げ出したい気分だった。
しかし、モモに頼まれてガムまで貰ってしまったので逃げるわけにはいかないのだ・・・それはタカの真面目な性格ゆえである。
だが、今は安心してもよさそうだ。見たところ今の2人は喧嘩しそうな雰囲気ではないし、警戒する必要は無いだろう。
「わーーーっ!?」
五月の言うことを無視し、勝手にペダルをこぎ始めたモモの自転車はやはり倒れた。今回は二人の支援は間に合わず、モモは地面に倒れる。
「あいたたた・・・・・・何でこんな乗り物にみんな乗れるのよ・・・?」
「練習したからだろ?みんなそうさ」
「私だって最初は何度も挫折しかけましたわ」
モモを起こしながら隼と五月は言う・・・誰だって最初はできないものはできない、幾多の練習を重ねてようやくできるようになるものだ。それは立つことと同じ、練習すればできなかったこともできるようになる・・・そうして皆様々なことができるようになるのだ。
「練習すればできることも、やらなければできませんわ・・・諦めずに頑張りましょう?」
五月の言葉で火が点いたのか、モモは再度自転車のハンドルを掴んだ。
「もちろん・・・意地でも乗ってみせるし・・・!」
そんな情熱な場面のところ申し訳ないが、一つだけ覚えていてもらいたい。
「僕の自転車・・・・・・」
隼と五月のおかげで少しは緩和されているが少なくとも数回、自転車は地面を叩いているだろう・・・その度にタカの自転車は歴戦の証をその身に刻み込んでいるに違いない。




続く・・・
最早桃太郎の原型が無いというw
しかしそこらへんは特に気にせず見ていただきたい(黙