『モモ』其の参 「犬井、帰還す」

『川本 モモ』の旅(?)の仲間に新たに『雉岡 タカ』が加わり、一行はスーパー『鬼ヶ鳥』に向けて進んでいた・・・一行といっても二人だが。
下僕・・・ではなくお供の『犬井 隼』は突然現れた『猿江 五月』から敵前逃亡し、ついでにモモの前からも消え失せた。モモからしてみれば隼の逃亡はいい迷惑なのだが、下僕・・・もといお供を半強制的にやらされた隼からしてみればモモの勝手もいい迷惑・・・なのだろう。
「・・・というわけ」
「な、なんだか複雑だね・・・」
先程の経緯をタカに説明すると、2人はもうすぐ橋に差し掛かろうとしていた。この橋を渡れば目的地はすぐそこだ。
「さぁて、渡るとしますか!」
モモが元気よく声を上げると同時にタカがその足を止めた・・・何かが目に付いたようである。
「待って、橋に何か書いてあるよ?」
タカの言う通り、橋の入口には看板のようなものが設置されている。二人は一度顔を合わせ、看板に近寄った。
「えーっと、『ご迷惑をおかけしています。当橋は修理及び補強中の為現在封鎖致しております。(迂回路、2km先の橋をご利用ください)』・・・・・・だって」
看板に書いてある文字をタカは丁寧に読む。それを聞いたモモは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「ウ、ウソでしょ・・・・・・!?」
この橋を渡れば本当に『鬼ヶ鳥』は目の前なのだ。だが、此処から2km先の橋を渡り、この橋を渡った先まで来るのに最低でもあと4kmは歩かなければならない。そんなに歩いたら家に帰る頃には昼を過ぎているかもしれない。
「何で今日に限って・・・・・・」
モモは膝を地面に着け、手を地に置き、まさしく『orz』状態になってしまった。
「えっと・・・とりあえず顔上げようよ川本さん・・・?ほら、まだ朝なんだしさ、家に戻って自転車に乗って出直して来れば良いんじゃないかな?」
「・・・・・・他に」
「・・・え」
モモは急に立ち上がり、土手の奥を見据えた。
「他に方法があるはずよ!今は家に戻る時間すら惜しいの、という正直めんどくさいの!というわけで雉岡君、何か考えて!」
「結局人任せじゃねェかっ!?」
そう鋭いツッコみを入れたのは逃げたはずの下僕・・・じゃなくて元お供の隼だった。自転車を一台引いている。
「・・・犬井君、逃げたんじゃなかったの?」
「誰があんな猿から逃げっかよ、一応ガム貰ったしな。オラ」
隼は自転車をモモに預けた・・・しかし驚いたのはタカである。
「それ・・・僕のじゃ・・・・・・」
どうも自分のと似ている自転車だと思いよく見ていたら、案の定フレームに『雉岡 タカ』と名前が書いてあった。
「ああ、うん・・・お前に借りようとしたんだが、お前の母さんが『出掛けてる』って言うモンだからお前の母さんに頼んだらアッサリ鍵を貸してくれた」
「・・・うん、もういいや。それだけわかれば・・・」
何故自身の自転車にしなかった・・・と訊いても無意味な気がするのでやめた。
「ていうか乗るの私なんだ・・・?」
いきなり自転車を渡されたモモはどこか顔が曇っている。
「当たり前だろ、走るの遅いんだからな」
「うん・・・それはわかってるんだけど・・・」
モモは少し恥ずかしげに、



「私、自転車乗れないんだけど・・・・・・」



うわぁ、そういうオチかぁ・・・と隼とタカは揃って頭を抱えた。





続く・・・
どうです、犬の忠誠心は立派なモンでしょう(何
しかし彼の思惑も見事に外れ、モモが自転車に乗れないというオチ・・・運動出来なさすぎw
それにしても五月の再登場はいつだろうか・・・・・・?


水曜日に更新した?気にするなよベイベー(黙