「希望の翼」 ♯ソヨ風
行間
「・・・い・・・・・・ぉい、起きろ!」
誰かに起こされた気がして、目を開けてみた。随分と長い夢を見ていたような気がする。目を開けたその先には一つ目の人物が立っていた、体が赤い。
「お前、なんでこんなとこで寝てんだよ、風邪ひくぞ・・・この辺じゃ見慣れない顔だけど、よそ者か?」
「えっと・・・」
とりあえず起き上がり、辺りを見渡した。一つ目の他にも雪だるまみたいな人や、帽子をかぶったのもいた。辺りには野原が広がっていて風がそよそよと吹いている。すると風の音に混じり、腹の虫が無意識に鳴りだした。
「・・・う〜ん、お腹へったなぁ」
「・・・・・・本当は食べ物をあげたいところだが、悪いけど無理だ。」
一つ目の人物は困りながら言う・・・・・・何か問題でもあるのだろうか?
「どうしたの?」
若者の問いに、雪だるまが答える。
「・・・実は、この国の大王が国中の食べ物を全て独り占めしてしまったんだ、国民も困り果てている・・・このままでは餓死者が出始めてしまうかもしれない」
なんという暴君か、大王なのに国民の命を足蹴にするとは酷い王もいたもんだ。
「・・・うん、僕がそいつを退治してきてあげるよ!」
胸にポンと手を置き、三人を見る、三人は若者を見ながらキョトンとしていた。やがて帽子をかぶった者が口を開く。
「言っとくけど相手は一応大王だよ。それなりの部下を持っているし、大王自身も強い。敵は多いと思うよ?」
「任せてよ、人の食べ物を奪う、それってつまり人の命を奪うって事でしょ?そんなヤツは僕が絶対に許さない、命はかけがえのない物だし、たくさんの命が集まるから国ができている。その国を破滅されるようなことは僕がさせない・・・絶対に食べ物を取り戻して見せるから・・・!」
そう言うと、彼は走り始めてしまった。大王の住む城は山の上だ、それを目印に向かっていくだろう。一つ目は走り去っていこうとする若者に問いかける。
「お前、名前はなんだ?」
「・・・ごめん、覚えてない」
「じゃあ勝手にこう呼ばせてもらうよ・・・」
一つ目は大声で叫んだ。
「『カービィ』ってなぁ!!」
カービィと呼ばれた若者は一度こちらを振り向き、笑顔で返してきた。その笑顔を見て一つ目は思った。
あぁ、アイツは絶対に嘘をつかないやつだ・・・と。
三人はカービィの言葉が最初、冗談に聞こえたが、その笑顔で確信できた。口にする言葉一つ一つに説得力があって、決して嘘はつかない・・・彼の笑顔からそう感じたのだ。
1
孤児院の人にお世話になってから、数か月が過ぎた。孤児院のみんなとはすっかり仲良くなり、孤児院事態にも慣れてきていた。
少し前だが、アルタイルが左目を失ってしまうという事件が起きた。アルタイルにも犯人の正体がわからなかったが、ベガだけはその正体を知っていた・・・・・・ダークマター族である。しかしベガ自身、自分の正体を隠す為にその真意もアルタイル達に話さなかった。
そんなある日の朝のこと。
「ふぁ〜眠いな・・・」
アルタイルは朝早くに目が覚め、廊下を歩いていた。その天井にはマルクの双子の弟、シリウスが潜んでいた。アルタイルに悪戯をしかけようとしているのだ。
シリウスは天井から真っ逆さま、ゴチッとアルタイルの頭上にクリティカルヒットした。
「うべ?!」
その様子を間近で見ていたのか、マルクがすぐに飛んできた。
「シリウスゥゥ!!」
「うしゃしゃしゃ」
シリウスは全力疾走で逃げたが電光石火のマルクにすぐ追いつかれてしまった。
「・・・・・・っ!!」
言葉にならない言葉を上げ、アルタイルが固まっていると、ベガが近づいてきた。
「・・・大丈夫か?」
「・・・まぁ」
廊下の突き当たりでマルクがシリウスをボコスカしていたが、やがてマルクがシリウスを掴んで連れてきた。
「ほら、謝れ」
「痛ててて、いやd」
「謝らないと"あのコト"バラすぞ?」
マルクの眉間が黒くなり、ダークなオーラを醸し出していた。こんなマルクは始めてみる。しかし、"あのコト"でどのコト?とベガは思う。
「すいませんでした!!いや本当に!!」
シリウスはマルクに脅され(?)、すぐさま誠心誠意を込めて謝罪した。一体どんな弱みを握られているんだか・・・・・・。しかし朝市で不意打を喰らったアルタイルはというと・・・。
「ふん・・・まぁいい、許す」
そこまで聞いたシリウスはホッと安心する・・・のも束の間
「わけ・・・無いだろ?」
額に怒りマークを浮かべまくるアルタイル、それにビビるシリウス・・・しかしそんな険悪なムードも日常茶飯事で、孤児院の笑顔のもとになっていた・・・ずっと、ずっとこんな日が続くと思っていた。
あんなことが起きるまでは・・・
To be continued…
行間で、カービィが登場・・・そして聞き覚えのあるフレーズ。
アルタイル達の悲劇、ついに次回明らかに・・・!
えっ、雪だるまはあれだよ、チリーだよ!
