「希望の翼」 ♯初メテノ友達

岩山にある木に生っている実を、アルタイルは採りながら枝の上で食していた。ベガ曰く「普通に食べられる実」らしいので食あたりとかは気にせずに食べ続けた。とにかく胃が満たされていないのだ、今ならこの木に生っている実をすべて食べられそうな気すらする。
「甘くて美味しいな・・・」
林檎と同じ類の果実だろうか、ものすごく甘いくて肉がシャクシャクしている。
ベガは木の上から山のふもとを見ながら、これからすることを考えている。
「(アルタイルが目覚めたはいいけど・・・一体これからどうしよう?翼が無いから天界には帰れないし、かといって誰かの家にお世話になるわけにもいかない・・・ましてやあたしはダークマター族みたいな姿だから、街に行っても怪しまれて追い返されるのが結果かもしれないなぁ・・・あ〜あ、どうしよう・・・!?)」
そう考えているうちに結局アルタイルは10個も果実を食べてしまった。しかしまだ空腹は満たされない、彼は自身は知らないが彼はおよそ250年間何も口にしていないのだ。まだまだ食べようかと思っていたアルタイルだったが、どこからか声が聞こえた。
「・・・ベガ、何か言ったか?」
アルタイルの言葉に考え事をしていたベガが反応した。
「えっ?いや何も・・・」
「・・・そっか」
しかし確かに声がした・・・声の質からして多分子供だろう、しかもどんどん近づいてきている。
「・・・・・・誰か来る」
「えっ?」
ベガはかなり焦ってしまった。もしかして自分たちの存在に気づいた民が捜索隊を結成して自分たちを捕らえに来たのではないか、と思ってしまったのだ。しかしアルタイルの考察では声の主は多分子供、ベガの予感は的外れである。
声はすぐそこの岩陰まで来ていた、ベガはアルタイルに近づく・・・すると岩の陰から人影が見えた。
「・・・あっれぇ、先客だ?」
「なんだよ、何が『秘密の果樹園』だよ・・・思いっきりバレバレじゃんか」
現れたのは2人の子供だった。その二人の顔と格好が瓜二つのところから、双子であることがわかる。アルタイルは果実を食べ続けながら二人を見下ろす。
「・・・どっちが兄?」
いや開口一番がそれかい・・・ベガは心内でそう思った。しかもめちゃくちゃどうでもいい質問だし・・・。

「ああ、それは僕、『マルク』の方だよ」
「(それで素直に答えるのね・・・)」
双方ともとんでもない対応力だ・・・ふつう初対面の人にため口で質問するものだろうか?そしてそれに即答するものだろうか?しかしアルタイルの攻撃(?)は続く。
「丸く?」
「マ・ル・ク!そんなこと言う人初めてだよ・・・」
不思議なことに、もうすでに2人の間に絆が芽生えている・・・気がする、もう友人同士にしか見えない・・・初対面なのに。
「あのさ、とりあえずその果実食いてェんだけど・・・」
シリウス、人に採ってもらうとは図々しいね・・・欲しかったら自分で採れば?」
「一言も『採ってくれ』なんて言ってねェよ・・・」
目黒の弟の方は『シリウス』というらしい。やけにダルそうにしているところを見るとどうやら無理矢理連れてこられたのかもしれない。
「いいよ、採ってやんよ・・・・・・ほら」
アルタイルは果実を2〜3個ほど採り、下に落とした。果実は重力に従い、真下に身を落としていく・・・つまりはこのままいくと潰れる。
「あっ、ちょ・・・・・・っ潰れるところだったじゃねェかバカ!」
ギリギリで全て取れたがシリウスの体制もギリギリで、今にも倒れそうだ。マルクとアルタイルは何故か揃って笑っている。
「フフフ・・・・・・ねぇマントの君、名前はなんていうの?」
「ん?」
唐突にマルクがアルタイルに訊いてきた。名前を答えることには何の支障も無いのだが・・・・・・ふとベガは少し不安になった。アルタイルが名前以外の質問に何と答えるのかが心配になったのだ。
「俺の名はアルタイル。星の戦士やってんだ」
のっけから自身の正体明かしちゃったよこの人・・・!?アルタイルの素直すぎる答えにため息をつくしかないベガであった。


「ところで・・・二人はどこに住んでるの?」
ベガの自己紹介も終えた時、マルクが訊いてきた。
「えっと・・・・・・」
アルタイルは記憶喪失でこの通りだし、ベガからすれば天界に住んでいることは明かしたくない・・・両方とも言葉が詰まってしまった。ベガはとりあえず頭に浮かぶ言葉を慎重に選んで言葉を発する。
「僕はちょっと家が無くてさ、そこの洞穴に住んでる・・・って言うのかな?」
「んっ、さっき秘密基地って言っ」
直後ガッ、とアルタイルの腹部にベガは突っ込んだ。
「・・・(この子達に変な目で見られたくないでしょ!?ここは話を合わせてよ!!)」
「・・・(あぁ、成程ね)」
つい女性の方のベガが出てきてしまったような気がするが、アルタイルが気づいてないから良しとしよう。
アルタイルは腹部を抑えながら答える。
「俺はちょっと思い出せない・・・まぁ家が無いってことかな」
「・・・二人とも家が無いんだね。実は僕たちもなんだ」
「?」
「えっとね・・・」
マルクは言葉を詰まらせてしまった。思い出したくないことなら無理に言わなくてもいいのに・・・。
「俺たちは両親失って今は孤児院で暮らしてんだ。」
戸惑ってるマルクの代弁をシリウスがし始めた。
「俺たちみたいな孤児を引き取ってくれる孤児院がこの山のふもとにあるんだ、俺たちはそこに暮らしてる。」
「ふぅん・・・」
アルタイルが何か考えてるようだ。まぁどうせろくでもないことなんだろうけど・・・「そこに住まわせてくれ」とか、きっとそんなんだ。しかし・・・記憶を失った今のアルタイルはクールというかちょっと生意気で新鮮だ。
「なぁ、その孤児院に俺たちも住まわせてくれないか?」
「・・・えぇ!?アルタイル何考えてんの!?」
薄々は予想していたがまさか的中してしまうとは思わなんだ。流石に無理だろう・・・だって見た目はこんなんだけど自分たちは下界の人間でいうと16歳くらい、とてもではないが孤児院でお世話になるほど子供ではない・・・まぁ今のアルタイルは子供のようなものか。だがやはり、そんなことができるはずが・・・・・・
「うん、いいんじゃない?院長に訊いてみるよ」
「また孤児院が賑やかになるな」
双子はあっさり承認・・・断りたいところだが、本音を言うとありがたい。ベガはアルタイルに乗り、二人の好意に甘えることにした。
これからどうしようかと悩んでいたベガとアルタイル。そんな時に2人の前に現れた双子、マルクとシリウス・・・この星の戦士の2人と魔法使いの双子との出会いが、彼らをある運命へと導く。
その日は、以外にもすぐにやってきてしまった。




To be continued…
はい、地味キャラという位置に立たされつつあるマルクと、その弟のシリウスはここで登場!!
次回あたりに「USDXな物語」本編で語られる「アルタイル、マルク、シリウス、ベガの過去」です。これはアルタイル達が体験した壮絶な"悲劇"の物語です。しかし皮肉にも、この"悲劇"が無ければアルタイルがカービィに出会うことはありませんでした・・・・・・。
ちなみに、アルタイルが片目を失った話はこれに描いてあります。

投稿日2010年9月7日・・・つまりは中二の頃ですね。めちゃくちゃ絵が下手くそですが、そこらへんはスルーで(え