「希望の翼」 ♯結果報告

「誰だよこの子・・・?」
ポルックスプレアデス星団施設でゆっくりしていたが、突然帰ってきたアンタレスが連れてきた子供に戸惑っていた。ポルックスが考えられる答えはこの三つ。
「えーっと・・・隠し子?」
「だとしたら何故今更明かす必要があるよ・・・?違う」
「じゃあ誰かから預かってきたとか?」
「んなもんベビーシッターにでも頼むだろ普通」
「拾った?」
「・・・うん、まぁそんなもんだ」
アンタレスが連れてきた子はオリオンというらしい、垂れ目で第三の目があるのが特徴だ。逆に言えばそれ以外の特徴が見つからない。オリオンは事務所内の色々なものを見て回っている・・・どこか懐かしい風景だ。自分たちも入団したばかりの頃はあんな風に事務所内をウロウロしてたっけ・・・そんで色々しかられたなぁ。
そんなどうでもいいことも思いつつ、ポルックスはお茶を淹れる。
「アンタレスはどの位休めるんだ?」
「うーん、わからん。後でベテルに訊いてみるか」
本当は休んでいていいほど暇ではないのだが、しばらく動きっぱなしだったから少しは休め・・・ということだろうか?
「つかこの子どうすんだよ、神殿に連れて行かないのか?」
「いや、最初はそうしようとしたんだけどよ、オリオンが『いやだ』とか言って行きたがらねェンだ」
何故に・・・神殿に行きたくない特別な理由でもあるのだろうか?というのは考え過ぎか、フッ・・・ポルックスはそう思いながらクールにお茶を机に置き、席に着く。
「なぁオリオン、なりたいものとかあるか?」
ポルックスの問いに勝手に団長の席に座っていたオリオンが反応する。
「ぼくねぇ、ほしのせんしになる!」
「おお、こんな小さいのに立派な夢を持ってるじゃないか!」
子供の扱いに慣れているのか、ポルックスはオリオンに対して優しく語りかける。アンタレスはそんなポルックスの意外な一面を見て何故か少し引いた。
「・・・何か文句でも?」
「い、いや・・・」
アンタレスはごまかすように一気にお茶を飲み干した。一気に飲んだら飲んだでめちゃくちゃ熱いし苦かった・・・麦茶でも紅茶でもなく、ガチでお茶だ。
「た゛た゛い゛ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛・・・・・・」
急に濁点だらけの声が聞こえたので何事か、とポルックスとアンタレスは入口を見た。
そこにいたのはやけに疲れた顔をした我らが団長ベテル・ギウスだった。
「団長、やっと帰ってきたか!」
ポルックスが淹れたてのお茶を持ってベテルに近寄る。
「その呼ばれ方慣れねェな・・・」
ベテルはそう言いながらお茶を受け取り、一気に飲み干した。その後の彼の結果は・・・ご想像にお任せする。



「とりあえず結果報告からだな・・・ポルックス、誰か見つかったか?」
各々は自席に着き、三人しかいないが結果報告が始まった。
「いや、全然だね。以上」
「・・・アンタレスは?」
「同じく・・・しいて言うならオリオンを拾ったくらいかな。以上」
そのオリオンはというと、給湯室で何かをいじっていた。
「・・・一応訊いておこうか、隠し子?」
「もうそのネタは十分だ・・・」
アンタレスは度重なる質問に頭を抱える。まぁ今はどうでもいいことだ。
「じゃあ次、俺だな。とりあえず、フォー・マルハウトの発見に成功し、今は神殿に預かってもらっている」
「マジかよ!?つかアッサリ言うなよこの野郎!!えっマジで!!?」
2人のテンションの上がりようが半端ないが、とりあえずベテルは続ける。
「ただ問題が一つ・・・彼には以前の記憶が無いため、俺たちのことなんて覚えちゃいない。そこんところの理解も宜しく。以上」
「・・・・・・」
やはり二人は黙ってしまった。わかっていたことなのに、いざそう言われるとやはりやるせない気持ちになる。しかしそんな二人を見てもベテルの気持ちは下がらなかった。
「確かにこれは事実だ・・・・・・けどな、フォーが帰って来てくれただけでも十分じゃないか。思い出なんてまた作り直せばいいんだ、そのために俺たちが今のフォーを迎え入れなくてどうする!?」
「ベテル・・・そうだな」
そうだ。記憶があろうと無かろうと、"フォー・マルハウト"という存在が帰ってきてくれればそれでいい、それで十分嬉しい。ポルックスとアンタレスは少しだけ目に涙を浮かべながら微笑んだ。



それから天界で9年の月日が、下界で4年と半年の月日が経った。





To be continued…
はい、これで『戦士たちの始動"天界編"』は終了です。
次回からは『戦士たちの始動"下界編"』の始まりです。ベテル達の出番はこれで完全に終了というわけで、次回からは今まで放置(?)されていたベガやその他の方々の話です。
これが終わったら『無翼の天使』及び『希望の翼』も終了致します。(T_T)
『無翼の天使』が始まったのって4月の13日だったんですね、時が経つのは早いものですw
今まで書いてきた日数はおよそ80日・・・つまり約80話も書いてたんですねw