「希望の翼」 ♯全否定

「くっ・・・はっ・・・」
ダメージが大きい、体中がズキズキする。頭がまともに働かない・・・一体何をすれば彼奴に攻撃が通じるだろうか?
「強さだけを求めた者は"戦略"というものを考えない・・・『実力で勝てる』と思い込んでしまうからだ。その自惚れが、その妥協が、結果的に自身の身を滅ぼすことになる。そして貴様はその良い例だ・・・強くなれば勝てなかった相手にも自然と勝てるようになる・・・そう思っているかもしれないが、世の中そんなに甘くないぞ。」
"強さ"とは何か?"力"とは何だろうか?
力があれば絶対勝てる、強くなればどんな相手も負かすことができる・・・そんな理想は現実ではほとんど起こりえない。強くなっているのは自分だけではないのだ、自分が力を付けるために努力している間、相手も同じく力を付けるために奮闘しているのだ。勝てるかどうかは勝負のその時にしかわからない。
「上には上がいると思わないからいつまで経っても勝てないのだ・・・この245年間、貴様が何をしてきたかはわからんし、探ろうとも思わん。貴様と戦うのはこれが初めてだから245年前よりどれほど強くなったのかも知らぬ。だがこれだけはわかる・・・貴様が如何に"強さ"というものを理解していないということがな。」
「・・・・・・!」
ベテルは聞いていることしかできなかった。反論ができなかった。ダークマターの言っていることすべてが的を射ていた。反論が不可能というわけではない・・・できる人には反論できるだろう、しかしダークマターの言葉によりベテルの精神にダメージが及んでいた。
『強く生きよう。そして強くなる』・・・この信念を全否定されたような気分だった。
ダークマターは戦意を喪失したベテルを見下す。
「そして・・・・・・」
「!」
地上でベテルとダークマターの戦いを見ていたフォーが突然何かに気づく。



「これが今の我々にとっての勝利だ、ククク・・・・・・!」



街が燃えていた。
ダークマターは紅く燃え上がる街を見渡して不敵に微笑む。ベテルとフォーはその光景を唖然と見ていた。
そう、この戦闘も、このやり取りも、すべてが単なる時間稼ぎに過ぎなかったのだ。いや、恐らく彼の"暇つぶし"にもなっていただろう。紅い街から黒い煙が立ち、それに紛れて複数のダークマター達が姿を現した・・・その数は10。
「見張りご苦労・・・おかげで邪魔もされずに事がうまく運んだ。」
10体の中でも比較的大きいリーダー格らしきダークマターが剣士に近寄る。
「まったく、"この中で私が一番弱い"という理由だけで見張り役にするのはこれっきりにしてほしいな・・・これでは年中見張り役ではないか」
「フッ、ならば更に実力を付けることだな。まぁ貴様がそう言うのであればこれっきりにしてやろう」
この中で、一番弱い?それでもそのダークマターにはベテルは手も足も出なかったのだ。とんだ実力の差を見せつけられ、ベテルは動く気すら起きなかった。リーダー格のダークマターはベテルの方を見る。
「星の戦士・・・あの時の小僧だな。強かったか?」
「いやまったく、張り合いが無かったぞ・・・・・・どうする、止めを刺しておくか?」
剣士は剣を構えるがリーダー格のダークマターはそれを止める。
「・・・いや、やめておけ。それは我等の『主』の意思に反するぞ」
フォーにはこの二人のやり取りの意味がまったくわからなかった。が、ヤバい状況下にいるということだけは理解できた。フォーは一目散にベテルの方に駆け寄る。
「オイ、逃げるぞ。こいつらはヤバい!あのモヤ〜って感覚の正体は街に潜んでいたこいつらのことだったんだ・・・オイ、立て!」
フォーはベテルの体を揺らすがベテルは立ち上がろうとしない。
「いや、だが・・・少しだけ我々にも遊ばせろ」
「!!」
リーダー格のダークマターの言葉にフォーの背筋が凍りつく。ヤバい・・・もう駄目だ。フォーが目を瞑ったその時・・・!
「"渦巻ク焔(プロミネンス)"・・・!」
ゴォゥゥゥッとフォー達の後ろからジェット噴射並の炎が噴射され、ダークマター達が一掃されてしまった。頭の上がやけに熱い・・・フォーはそう思いゆっくり目を開けると、そこにいたはずのダークマターはもう一体も残っていなかった。
「・・・一体何が?」
「これは・・・」
一瞬だが肌に感じた高温に、ベテルも正気に戻った。
「まったく、揃いも揃って数の暴力か・・・・・・大丈夫だったか?」
後ろにいたのは、『星の勇者十二隊』の隊長・・・太陽のような姿をしたソルだった。



「な、何故ソル様がここに・・・!?というか何故俺がここにいるとわかったんですか!?」
「星の勇者十二隊隊長をナメんな。お前がどの星に行ったかなんてすぐわかるっつの」
にしても来るタイミングが素晴らしすぎませんか・・・?あまりにもグッドタイミングで現れたので跡を追われたのかと思ってしまう。
「それよりも火!火!」
フォーが二人に呼びかける。まだ街は鎮火していないのだ。
「ああ、消火なら水のスペシャリストが来てるから安心しな」
スペシャリスト・・・?」
ベテルとフォーは声を揃える。すると突如・・・
「"鉄砲水鉄砲(ウォーターキャノン)"!」
街に直接洪水を流したかのような激流が流れ、街の火が一気に消え去った。勢い的には『渦巻ク焔(プロミネンス)』にどこか似ている。しかし、この洪水のせいで街が半壊してしまった。
「いやぁ、勢い余って街を半壊させちゃいましたよ・・・でもまぁ燃え尽きてしまうよりはマシです・・・よね?」
「・・・・・・。」
さすがのソルも予想してなかったのか、ベテルやフォーと共に唖然としている。後ろから声がしたのでまた背後にいるのか・・・ベテルはそう判断する。そして声の主も言い当てる。
「・・・エルミス様、これじゃあダークマター族とやってることが一緒では」
「まぁまぁ、後でちゃんと元に戻すのでとりあえずこのことは水に流しちゃってください」
「我田引水はやめろよ・・・どうすんだよこれ、星の戦士としてあるまじき行為だろ・・・」
ソルは呆れた。どう責任を取らせようか・・・
「だからちゃんと復興させますって!街の民はマーズが避難させたというか連行したというか・・・とにかく犠牲者はゼロですよ?ていうかそもそも僕が忙しいのわかってるくせに僕を呼ぶからですよ!?だから勢い余って半壊させちゃったんですよ!」
「俺が悪いってのか!?」
ああだこうだ口論していたがベテルはあることに気づく・・・あれ、まさかこうなることをソル様たちはわかっていたのか?っていうか"連行"って!?
「エルミス様!連行ってどういうことですか!?」
「あぁ、この街の民全員、色々な事件の犯罪者なんですよ。つまりこの街自体が犯罪者たちのアジトというか隠れ家というか・・・」
何という素晴らしく下らないオチ・・・というか全然隠れ家じゃないし・・・ダークマター達はきっとこのことを知らずに襲ったんだろうなぁ・・・だとしたらいい気味だな。
様々な思いを巡らせたベテルだったが、とりあえずこう思った。
色々と謎は残ったが、とりあえず今日はフォーを天界に連れて帰ろう。



To be continued…
色々とカオスw
前半は真面目だったのに後半がカオスww
今回はツッコみどころ満載でしたね〜^ ^;



今日は硬式に行ってきました(^_^)b
いやぁ、久々なもんでだいぶナマってしまいましたよorz