「希望の翼」 ♯初対面ノ再会

                       行間
この世界は退屈すぎる。
命が生まれ、命が死ぬ・・・それを延々と繰り返しているこの世界に果たして価値があるのだろうか?
何千年、何万年と悩んだ・・・・・・その世界を見、その世界を感じながらずっと悩み続けた。
無様に生にしがみついている命を見ていると随分と滑稽だ。何故そんなにしてまで生き物は生きていたいのだろう?この世に存在していたいのだろう?誰しもがいずれ死ぬ運命なのだ、それが早いか遅いかの違いなのだ。
そう、いずれ自分も・・・・・・。
「・・・しかし、私はまだまだ死ねないのだよ。まだ・・・・・・ね」
そう、退屈で無価値で下らないこの世界を"創り直す"ために・・・自分はまだ死ねない。
「おい、いるか?」
「ここに・・・」
「そろそろ本格的な準備に入る。これからしばらく、一族の指揮はお前に任せる。」
「承知しました・・・お任せくださいませ」




                       1
ここは天界の誰も知らない森の奥深く・・・
森が歌い、風が舞い、雲が躍る。



・・・目覚めるべき、"その時"が来た。



森の一部に全く木々が存在しない場所がある。そこには木どころか、草も、花も生えていなかった。
そんな広場の中心に一つの淡い光が生まれ、風が集い始めた。その風は輝く粉を運び、光に入っていく・・・。それはやがて形を成していき、やがてはある生物の形となった。
星の戦士・・・天界に住んでいる、宇宙の秩序を正す為に生まれた戦士・・・。

それは静かにその目を開けた。
「・・・オ・・・リ」
初めて開いた口は、小さく言葉をささやく。目は普通より少したれ目で、額には第三の目があった。
「オリ・・・オン」
それの姿はゆっくりと地面に着き、足で地を踏む。初めての土の感触に目が少し丸くなる。
呼吸も、瞬きも、歩行も・・・すべてが初めてで新鮮だった。
"それ"は森を歩き始めた。何かに導かれ、惹かれるように・・・・・・。




                       2
あれから230年もの月日が流れた。
「下界の星々を捜しまわってもう230年も経っちまった・・・それなのに一人も見つからないなんて・・・」
体中の古傷が疼く。もうこれ以上、捜す意味なんてないんじゃないか?そんな考えが頭をよぎる。
「・・・駄目だ駄目だ!!こんなマイナスになっちゃ・・・!」
ベテル・ギウスは頭を左右に振る。こんな無駄な考えは捨てちまえ!
しかし、見つからないのも事実・・・今まで何千という星々を回ってきた。しかし、一向に仲間が見つからない。
今から245年前、天界でダークマター族による襲撃があった。幸いにも死者はゼロだったが、プレアデス星団という組織の団員のほとんどが行方不明となった。今、残っている団員はベテルを含めた3人のみ。団長も行方不明となってしまったため、あれこれあってベテルが団長を務めている。
「この星も駄目か・・・帰ろう。泉はどこだったか・・・?」
ベテルは後ろを振り向き、歩き始めた。その時、ベテルの真上を何かが通り、一瞬影が被る。
「ん・・・鳥か?」
ベテルは影が向かっていった方向の空を見た。
それは、鳥ではなかった。ピンク色の球体をしていて、尻尾が生えている。頭の上には薄黄色の輪があり、白く輝く翼が生えていた。それはどこかで見たことがあった。あの尻尾は・・・
「マジ・・・・・・か・・・!?」
ベテルはすぐにその球体を追いかけ始めた。走りながら翼を広げ、地を蹴る。ベテルの体が宙に浮き、滑空を始めた。
「(あれは・・・あの人は・・・!)」
ベテルと尻尾の距離が縮まると、ベテルは叫ぶ」
「フォー!?」
ベテルの声が届いたのか、その球体はベテルの方を向く。ベテルの姿を確認するとその球体は地面に降り始めた、ベテルもそれを追いかける。2人が地面に着くと、フォーと呼ばれた人物がベテルに駆け寄ってきた。ベテルは口を開こうとするが、
「お前、星の戦士か?」
フォーと呼ばれた者の言葉にベテルの顔が一瞬固まる。しかし、それはずっとわかりきっていたことだ。


彼には以前の記憶が無い。


消されたのだ。
『記憶を消し、意識を失わせたまま下界に飛ばす』・・・あの時、布らしき物を巻いた人物が言っていた言葉だ。
ベテルは落ち着いてフォーと思われる人物の質問に答える。
「・・・ああ、俺は星の戦士のベテル・ギウスだ。お前は?」
記憶を失っているなら自身の名前も覚えていないものだが、一応訊いておく。
「俺か?俺の名は『フォー・マルハウト』ってんだ。お前と同じ、"星の戦士"だよ」
ベテルの顔が少し緩んだ。まさか、名前を覚えているどころか自分は星の戦士だということまで覚えているとは。ベテルは質問を続けて質問をする。他に覚えているものは無いか、調べる必要がある。
「生まれた場所とか、故郷のことを覚えているか?」
「・・・・・・知らねェよ、気づいたらあの森にいたんだ。」
フォーはある森を指す。ベテルは顔に手を当てた。
「フォー、信じてもらえないかもしれないが・・・俺たちは元々仲間だったんだ。」
「・・・・・・?」
フォーの反応は薄い。やはり初対面(?)の人にいきなりそんなこと言われて信じるわけないか・・・・・・。
「お前にはどこで生まれ、どこで育ち、なぜここにいるのかの記憶が無いんだろう?」
「・・・まぁ、そうだが」
フォーは困惑しながらも答える。
自身の名前も星の戦士だということも覚えているのに他のことは一切覚えていない。ベテルは質問を変える。
「なぁ、何であの方角に飛んで行こうとしたんだ?」
ベテルに影が被った時、フォーは飛んでどこへ行こうとしていたのだろうか?
「・・・んー、あっちの方で何かを感じたんだよ。何か、こう・・・モヤ〜って感じのが・・・」
フォーは様々な気配を常人より感じやすい体質だった。そのモヤ〜というのは、おそらく感じ取った気配だろう。
「あっちに何かあるのか?」
「わかんね、でも何か気になったんだよ。今もちょっとモヤ〜っとしてる」
何やらよくわからないが、そこに行けば何かがあるかもしれない。
「よし、行ってみるか?」
ベテルはフォーに問いかける。
「おぉ、仲間が増えるとは思わなかった。行こう!」
2人は"モヤ〜"の正体を突き止めるため、その場所に飛んで行った。



To be continued…
天界生まれで10歳の人物・・・答えはオリオンでした!
オリオンは見ての通り、ただの星の戦士ではありません、特別な星の戦士です。
フォーも久々に登場!記憶はまったくございませんorz
挿絵は点描やってみますたw
前回までが『復活の天界編』だとするならば、これからは『戦士たちの始動』です。