「希望の翼」 ♯支エ

人はその一生で何をすることができるのだろうか?
一つは世界を研究し、後世に結果を残すことだろう。一つは人々の娯楽にすべてを費やすのだろう。
様々な生き方があるが、人のために生きるのも、自由気ままに生きるのも、何をするにもすべては1人の自分に委ねられる・・・自分を決めるのは自分なのだ。
『人生の意味・・・生物は常に生きるために精一杯だ、そんなものを探す暇なんてどこにもないのさ・・・結局"生きるために生きている"んだよ』
辛くても仕事をするのは生きるために必要な物を買うための金が必要だからだ。
常に楽しく過ごそうとするのはストレスによる自身の暴走や病気を抑えるためだ。
『学校に行くのも寝るのも遊ぶのも・・・すべて生きるために行っていることなんだ。でも同時に、知らず知らずの内に人生の意味も探している・・・人は仕事も遊びもつまらなく感じてしまうと、生きる意志が無くなってきてしまって人生が一気につまらなく思えてくるんだ・・・それは何でだと思う?』
『・・・・・・同時に"人生の意味"ってやつを探すことも止めちまってるからだろ?』
仕事や娯楽をすること=人生の意味を探すこと=生きること
どんなこともつまらないし答えも見つからない、そして生きる希望も無くなる・・・・・・まさに今のアルタイルの状態だろう。
『そうだね、その通り。アルタイル、君は授業もつまらないと思っているし星の戦士を目指す理由もはっきりしていない・・・つまりは自身が生きることの価値を見出せなくなっているんだ。でも君はさっき星の戦士を目指す理由を見つけたよね?』
『無理矢理決められた感があるんだけどな・・・』
『何か・・・それから変わったことはなかった?』
『およそ五分前だぞ、そんな短時間で変化に気づくわけが・・・』
と言いかけたが、アルタイルはあれから少しスッキリしていた。デネブの質問の答えなどで、用意した言葉の他にも自然な言葉が頭に浮かんでいた。
デネブはニコリと微笑む。
『気づいたでしょ?今のアルタイルには"星の戦士を目指す理由"がある。それが君が生きることの唯一の支えになってるんだ。』
『・・・・・・』
きっとそれだけではない。
「いいんじゃないの?その動機で目指したって」・・・・・・この言葉のおかげでもあるかもしれない。この言葉を聞いたとき、アルタイルは"デネブ"という自分の味方の存在を初めて感じることができたのだ。こんな考えでも理解して納得してくれる人がいる・・・・・・それが更にアルタイルの支えとなった。
『君の心に開いている穴は二つだ。一つは友達の存在、もう一つは人生の意味だね。でも、この穴は無理に埋めようとしなくていいんだ・・・というか、すべての穴を埋めるなんてことはきっと誰にもできないよ。僕にもね』
『デネブにも・・・』
『うん、でも僕には友達がいる。家族とは違う、かけがえのない存在がいるんだ。』
そのおかげでデネブの心に開いている穴は一つだけだろう。今までずっと他人と関わることを拒んでいたアルタイルに友人などいなかった。本が友だったからだ。
デネブはこう言いたかった。
人生の意味なんて知らなくていい、ただ友という存在を知ってくれればそれでいい・・・と。
『君のその穴を埋めるか否かは君自身だ。こればっかりは僕は手助けができないし強制もできない・・・自分を決めるのは自分なんだから。』
『・・・人生の意味を見つけるためには、この"友達の存在"っつう穴を埋めなきゃ駄目なのか?』
『うーん、それはわからないけど、埋めとくと見つけるのが少しは楽になるかもよ?』
『そうか・・・・・・』
実は、自分の存在や人生について真剣に悩んでいる時点ではまだ人は生きる希望を失ってはいないのだ。「絶対に答えがあるはずだ」と答えを必死に探しているそれは、「死ぬまでに絶対見つけてやる」という意思だ。しかし、どんなに考えを絞り出しても答えが出ないと諦めてしまう人がいる・・・この時初めて人は生きる意志を失い始めるのだ。
アルタイルはまだ生きる希望を失ってはいない。人に相談するのも一つの手だが、相談される側が「なんとかなるよ」とか「とにかく元気出せよ」とか言うのはあまりいいとは思えない。真剣に悩んでいる人の相談に乗ろうと思うのならば、自分もその人の気持ちになり、共に考えていくのが的確なのだ。
『僕たちの寿命は下界の生き物より相当長い。中には何億年も生きてる人がいるらしいし・・・そんな人生の中で答えを見つけられる日も来るかもしれないね。まぁまずは心から信頼できる友達を作るのが先だろうね。』
心から信頼できる友を作る・・・そんな友達は人生の中できっと一人か二人くらいしかできないだろう。それが"相棒"であり、"パートナー"なのだ。
『君のことを気にかけて心配してくれる人がいる・・・僕もその一人でいたいんだ。』
『デネブ・・・』
こんな清々しい気持ちは初めてだ。自分の体重が半分近く減ったような感覚すらある。人に相談するだけでこんなにも心が軽くなるものなのか・・・。
『それに・・・』
トントン、と玄関の戸を叩く音が聞こえた。誰が来たようだ。
『きっと彼女も・・・ね』
『・・・・・・』
デネブは部屋を出て階段を降りて行く。少しすると、アルタイルはデネブに呼び出された。アルタイルは部屋のドアノブに手を掛ける。少しためらったが、やがて勢いよく扉を開けた。廊下には一枚の紙が落ちている・・・さっきの手紙だ。アルタイルはそれを拾うと、クシャリと丸くした。階段を降り、玄関の扉が見えるとアルタイルはゆっくりと息を吸い始めた。
客は、ベガだった。
『ア、アルタイ』
『ごめん!!!』
アルタイルが、頭を下げて謝った。
ベガは何が起こったのかよくわからないといった感じで、顔が固まっている。
『俺は自分のことしか考えない大馬鹿野郎だ!そのせいでお前にも当たっちまった・・・・・・本当にごめん!!』
『えっと・・・』
アルタイルは顔を上げ、ベガと目が合う。ベガの顔がボッと真っ赤になった。
『それに・・・ありがとう』
デネブはニコリと笑う。
「君が頭を下げて『ありがとう』って言うはずないもん!絶対『サンキュー』とか『Thank you』とかそんなこと言ったに決まってるよ!」
ようやくアルタイルが一人の人間として動き始めた、デネブはそのことが嬉しくてたまらなかった。
人がすぐ変わるのは簡単なことではない、様々な出来事をや体験を通して少しずつ変わっていくのだ。
人に相談した・・・アルタイルにとってはこれが一つのきっかけだったのだ。
『あ、あたしもごめん・・・なさい』
『?』
アルタイルは顔を緩めた。ベガが謝る理由が見当たらない。
『え、えっと、昨夜呼び捨てにしちゃって・・・ごめん』
『・・・そんなことかよ』
『なーんだ、つまんないの』
兄弟揃ってガックリしていた。てっきりもっと重大なことで謝られるかと思っていたのだ。
『んなこと気にすんなよ、別に呼び捨てで呼んだっていいんだぞ?』
『い、いいの!?』
『うんうん、そういうところから仲良くなっていかないとね』
デネブが意味深なことを言うが、二人は理解していないようだ。うん、それでいい。
『ベガ、僕も君のことを親しく呼び捨てさせてもらうよ?』
『うん、その方が話しやすいわ』
『ありがとう・・・ベガ、アルタイルのことを守ってあげてね?』
『え・・・・・・』
『ちょ、俺は女子に守られるほど弱くねぇぞ!?』
アルタイルは必死に否定する。女子に守られるなんて恥だ。せめて支えてくれるだけでいい。
『うん、アルタイルに意地悪する奴から絶対に守ってあげるから、任せて!!』
アルタイルは「マジかよ」と言いたげな顔で玄関に座りこんだ。
『・・・わーったよ、好きにしてくれ。俺が言うのもどうかと思うが、イジメられてるヤツを庇うと大抵庇ったヤツもイジメられるからな。そういうときは、俺が守ってやるよ。持ちつ持たれつだ』
『『!!!!!!』』
その言葉にはデネブも驚いた。
『(ええ!?まさかそうなるとは思わなかった!!僕ビックリ!)』
ベガに関しては顔が真っ赤っかになってフラフラとし始めた。
デネブとアルタイルは慌てて家に上がらせてベットに座らせ、冷たいジュースを渡す。冬なのに氷入りのジュースを。



あれからアルタイルはドンドン変わっていった。学校でのイジメも次第に無くなっていき、仲間も、友達も増えていった。
そうしてデネブもアルタイルも、そしてあたしも無事に卒業することができたのだ。
そんな思い出も全て、”彼”の手によってアルタイルから無くなってしまった。
でも、たとえアルタイルが自分のことを覚えていなくても、自分はアルタイルのことを守ってみせる。彼の記憶が元に戻るまで、いや戻っても、彼を陥れる輩から守るんだ。
光が、見えた。




・・・続く!!
ようやく、過去編の過去編が終わりましたぁ・・・!(゚ω゚)
まぁベガはアルタイルと関わっていく内にその人間性に惹かれていったというところでしょうw
最後の終わり方は、一応二つの意味があります。



終わった・・・終わったよ・・・
野球部が、勝っちまったよorzorzorz
応援行きたくねぇ!!!ヽ(゚Д゚)ノ
誰か助けてくれぇ!!ヽ(゚Д゚)ノ



八日間連休六日目
今日も家で(ry