「希望の翼」 ♯準備完了

アンタレスは休憩ルームのポルックスとプルートのいるベンチから離れたベンチでぐっすり寝ていた。
「起きやがれこのすっとこどっこい」
「あんっ!?」
ベシッと頭を叩かれ、アンタレスは飛び起きる。目の前にはライバルであるマーズが仁王立ちをしていた。
「何しやがんだこのシスコンがっ!!」
「いやいや、俺に姉妹はいねェよ・・・・・・とうとう頭狂ったか?」
アンタレスはベンチに座ったままボーっと目を薄めている、マーズなんてまるで見ていない。マーズは呆れてアンタレスの目を無理矢理開ける。
「ここで寝られると他の人に迷惑が被るんだよ、寝るなら外で寝やがれ・・・・・・!!」
アンタレスのほっぺたをムニーッと伸ばし、続いてビンタを連打する。その目には悪意しかこもっていない。いつの間にかポルックスとプルートが退室していて、休憩ルームには一般の客しかいなかった。
バチンバチンと何度も往復してビンタをされればさすがにアンタレスも目が覚める。アンタレスは急に立ち上がり、



「何しやがんだこんのロリコンがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



その大声は休憩ルーム中に響き渡り、当然客にもまる聞こえである。客の視線はすべてマーズに向けられ、マーズは背筋に嫌な汗が流れる。アンタレスは逃げる準備を始めたがすぐにマーズに捕まった。
「な・ん・で・そうなんだよ・・・・・・んの野郎・・・!?」
マーズの声はかなり低くなり、並の者では聞き取れないほどになっていた。
「お前、この間迷子の女の子を助けてたろ?そん時のお前、俺でも見たことないような笑顔になってたぞ・・・・・・?」
「・・・んな訳ねぇだろぉが!!ぶっさらうぞこんの三下がぁぁぁぁぁぁ!!!」
客の視線が一層厳しくなる・・・それはもう軽蔑に近い。「うわぁ・・・」なんて声が聞こえてきそうだ。
ガッシャァァァァンッとガラスが割れ、アンタレスとマーズは外に飛び出した。
「今日という今日は堪忍袋の緒がブチ切れたぞテメェ・・・やっぱもう一度寝てろ、一年ぐらいなっ!!」
「やれるもんならやってみな、俺の睡眠を邪魔した罪は重いぞ・・・ダシャシャシャシャシャシャシャシャ!!!」
2人のテンションが訳分からなくなり、その場が荒ぶった。取っ組み合い、投げ合い、殴り合う。
騒ぎを聞きつけたのか、ギャラリーをかき分けてプレアデス星団長のベテル・ギウスが割り込んできた。
「何やってんだよアンタレス!?マーズ様も!?」
「うるせー、このロリコンが先に手ェ出してきやがったんだ!!」
「ロリ・・・・・・」
ベテルの目が先程の客と同じになる。
「このアホンダラの言うことを鵜呑みにすんなベテル!!」
「いやでもロリ」
「テメェは黙れぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
止めに来たはずのベテルはいつの間にかその場から遠のき、神殿に戻る。あっ、こりゃ俺が止めるのは無理だわ・・・・と悟ったのだ。
しばらくすると、ベテルは強い味方を連れてきた。
「・・・・・・何やってるのですか?」
エルミスである。
「エルミス、このバカを止めてくれ!!」
マーズが助けを乞う、いつの間にかマーズは被害者に回っていた。
「・・・・・・まず、状況をわかりやすく説明してください」
エルミスが静かに質問する。すると、喧嘩をしている二人の動きが突然止まり、汗が滝のように流れ始めた。


あっヤバイ、この人滅茶苦茶怒ってる・・・・・・。





結局、喧嘩はお互いのせいということで収拾がついた。しかし当の二人はというと・・・・
「納得いかねェ・・・」
「色々なもんを失った気がする・・・」
とアンタレスはともかくマーズは黄昏ていた。
ベテルはそんなマーズの肩に手を置き、
「そんなに落ち込まないでくださいよ、失ったものはこれから見つけていけばいいんですから、いずれすべてがもとに戻りますよ」
「ナニソレ名言すぎる・・・・・・」
マーズはベテルの顔を見て少し気分が良くなった。立ち上がり、神殿の方を向く・・・割れた窓周辺が派手に壊れている。
「俺、今日の夕方から団員の捜索のために下界に降ります」
「そうか・・・頑張れよ!」
「はい・・・でも本当は今下界にいるはずだったんですけどね・・・」
ベテルの顔がフッと気の抜けた顔でそっぽを向く。その言葉にマーズは責任を感じずにはいられなかった。



・・・続く!!
今日はあまり進行しませんでしたねw
まぁこれでベテルも安心して(?)下界に行けるってモンですよ。




ワドルドゥを結構マジで描いてみた。